ゼロクリック問題とは?SEOへの影響と今すぐ実践すべき対策

2026.04.25

WorkWonders

ゼロクリック問題とは?SEOへの影響と今すぐ実践すべき対策

はじめに

検索エンジンにキーワードを入力しても、表示された要約だけで満足し、どのサイトも開かずに検索を終える人が増えています。このゼロクリック問題を放置すると、自社サイトへの流入が減り、広告収入や問い合わせといったビジネス上の成果が目に見えて落ちていきます。

実際に、検索全体のうちサイトへの流入につながるのは約36.5%にとどまるというデータや、AIによる要約がクリック率を34.5%低下させたという調査結果が報告されています。本記事では、ゼロクリック問題の定義や背景から具体的なデータ、SEOへの影響、そして今すぐ取り組める対策までを順に解説します。

ゼロクリック問題の定義と背景

ゼロクリック問題の定義と背景

ゼロクリック検索の意味

ゼロクリック問題とは、検索エンジンの利用者が検索結果の画面上で情報を得て満足し、どのWebページもクリックしないまま離脱してしまう現象を指します。たとえば、人物の経歴や用語の意味を調べたとき、検索結果のパネルや要約欄に答えが表示されれば、わざわざリンク先のサイトを開く必要がなくなります。

この現象自体は以前から存在していました。検索エンジンが特定の用語や人物についてWeb上の情報を要約して表示するナレッジパネルなどの機能によって、すでにゼロクリック問題は起きていたのです。しかし、生成AIの普及に伴い、ユーザーの情報収集行動が検索エンジンから対話型の生成AIへ移行し始めたことで、Webサイトへの訪問を伴わないゼロクリック検索が常態化しつつある実態が報告されています(参照*1)。

サイト運営者にとっては、コンテンツが読まれないまま情報だけが消費される構造が広がることを意味しており、広告収益やリード獲得の土台が揺らぐ点がゼロクリック問題の核心です。

AI Overviewsと生成AIの台頭

ゼロクリック問題が加速した大きな要因が、GoogleのAI Overviews(AIによる検索結果の要約機能)です。検索結果の最上部にAIが生成した回答が表示されるため、利用者はリンクを開かなくても疑問を解消できるようになりました。2024年以降のAI Overviewsの実装、さらに2025年のAI Modeの導入によって、ゼロクリック問題は量的にも質的にも新しい段階に入ったと指摘されています(参照*2)。

海外の報道機関やオンライン出版社の間では、こうした状況を「Google Zero」と呼ぶ声もあります。広告収入をサイトへのアクセス数に依存する多くの媒体にとって、ゼロクリック問題の深刻化は存続に関わる事態と受け止められています(参照*3)。

検索エンジン側がAI機能を強化するほど、ユーザーが検索結果画面から離れにくくなる構造は今後もさらに進むと見込まれます。そのため、サイト運営者はゼロクリック問題を一時的なトレンドではなく、検索の仕組みそのものの変化として捉える必要があります。

ゼロクリックの実態を示すデータ

ゼロクリックの実態を示すデータ

国内調査が示す利用実態

国内調査では、AIが作成した検索要約だけで調べるのをやめる頻度を質問したところ、合計64%が要約のみで検索を完結させていました。全国の15歳から79歳の生成AI利用者を対象にした調査で、「ほとんどやめる」が10%、「よくやめる」が19%、「ときどきやめる」が35%という結果です。年代別では、10〜20代の女性と50〜70代の女性で「ほとんどやめる・よくやめる」の割合が他の年代より高い傾向が出ています(参照*4)。

この数字は、生成AIを使っている人の約3人に2人がゼロクリック検索を経験していることを示しています。若年女性だけでなく中高年女性にもゼロクリック行動が広がっている点は、年代を問わない幅広い層でサイトへの訪問機会が失われつつあることを裏付けています。

ゼロクリック問題の影響を受けるサイト運営者は、自社のターゲット層がどの年代に該当するかを照らし合わせたうえで対策の優先度を判断する必要があります。

海外調査が示すトラフィック減少

海外のデータは、ゼロクリック問題がサイトへの流入を具体的にどれだけ減らしているかを示しています。2025年9月時点のGoogleの検索セッション数は約61.8億回で、そのうちサイトへの流入につながったのは36.5%の約22.6億回にとどまりました(参照*5)。

マーケティング企業Ahrefsの調査では、AI Overviewsがクリック数を34.5%減少させたと報告されています。AI Overviewsの表示回数自体も前年3月比で116%増加しており、影響範囲は拡大の一途です(参照*6)。

さらに、分析会社Similarwebのデータによると、主要1,000ドメインへの検索経由のアクセスは2024年6月の120億回から2025年6月の112億回へ、前年比約6.7%減少しました。ニュース検索に限ると、クリックにつながらない割合が2024年5月の56%から2025年5月には約69%へ上昇しています(参照*7)。消費者の80%がゼロクリック結果を検索の40%以上で利用しており、自然検索のトラフィックは15%〜25%減少しているとの分析もあります(参照*8)。

SEO・Webマーケティングへの影響

SEO・Webマーケティングへの影響

検索意図別の影響度の違い

ゼロクリック問題の影響は、すべての検索キーワードに一律に及ぶわけではなく、検索意図によって大きく異なります。AI Overviewsが表示されるクエリーは全体の約13%にすぎませんが、そのうち88%は「情報収集型」のクエリーに出現するという調査があります(参照*2)。

つまり、「○○とは」「○○ やり方」のように知識や手順を調べる検索はAI要約に代替されやすく、逆に特定の商品を買いたい、サービスを申し込みたいといった行動意図の強い検索では、AI Overviewsが表示される割合はまだ低いといえます。ニュースや報道領域のWebサイトは、情報収集型クエリーが流入の主軸となるため、最も影響を受けている業種のひとつです。

自社サイトの流入キーワードのうち、情報収集型がどれだけの比率を占めるかを把握することが、ゼロクリック問題による被害の程度を見積もるうえでの出発点になります。

メディア・EC・BtoBへの波及

ゼロクリック問題の影響は、メディアだけでなくEC(電子商取引)やBtoB企業にも広がっています。海外ではCNNのサイトへのアクセスが前年比約30%減少し、Business InsiderやHuffPostは約40%減少しました。旅行ブログ「The Planet D」はAI Overviews導入後にアクセスが90%落ち込み、閉鎖に至っています(参照*3)。

国内のBtoB領域でも、ある電気機器メーカーのマーケティング担当者が「2025年後半はWebサイトのアクセス数が約30%減少した」と明かしています。Webサイトへの流入が減れば問い合わせ数も減り、生成AIが即座にそれなりの回答を返せるようになったことで、一般的なノウハウを語るだけのウェビナーやホワイトペーパーの価値も相対的に下がりつつあります(参照*9)。

ポータルサイト運営企業でも、ゼロクリック検索の普及がアクセス数にマイナス影響を与え、広告収入の減収につながった事例が報告されています(参照*10)。業種を問わず、検索流入に収益を依存する構造を持つ企業ほど、ゼロクリック問題のダメージは深刻です。

ゼロクリック時代の対策5選

ゼロクリック時代の対策5選

GEO・AIO対策と構造化データ強化

ゼロクリック問題への第一の対策は、AIによる要約に自社の情報が正しく引用される仕組みを整えることです。ChatGPTとGeminiはそれぞれBingとGoogleの検索基盤を利用しているため、双方に対して構造化データやE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)を強化し、正確な情報を機械学習させることが求められます(参照*1)。

また、キーワード単位の最適化だけでなく、ユーザーの質問に直接答えるコンテンツ設計も有効です。FAQページや商品説明、ブログ記事を「質問と回答」の形に整えることで、AIが情報を拾いやすくなるという考え方が広がっています(参照*8)。

構造化データの整備は検索結果でのリッチスニペット表示にも効果があるため、従来のSEOとAI対策を同時に進められる一石二鳥の施策です。

一次情報発信による引用獲得

AIが要約を生成する仕組み上、すでにテキストとして流通している情報の再構成は得意ですが、現地・現物を取材し検証する作業や、独自の調査データを生み出すことは現時点ではできません(参照*2)。

この特性を逆手に取ると、自社でしか持ち得ない一次情報の発信がゼロクリック問題への有効な対抗手段になります。独自の調査レポート、実地取材に基づく事例記事、自社製品の検証データといったコンテンツは、AIに引用されやすいだけでなく、他のメディアからの被リンク獲得にもつながります。

「AIが代替できない情報源」としてのポジションを築くことが、検索結果上で自社のコンテンツが参照元として残り続ける条件になります。

指名検索を増やす評判形成

ゼロクリック問題の影響を受けにくい検索行動のひとつが、社名やブランド名を直接入力する「指名検索」です。指名検索はAI要約で代替されにくく、利用者が自社サイトを訪れる動機が明確なため、流入の質も高い傾向があります。

AIはWeb上の評判を学習するため、SNSやレビューサイトでの言及を増やし、「このジャンルの代表的なサービス」としてAIに認識させるエンティティ最適化(AIに対する知名度の向上)が有効です(参照*1)。

直接クリックに至らなくても、AIとの会話の中で自社名が繰り返し表示されること自体がブランド認知につながります。AIが生成する会話の中に自社の存在を織り込む視点は、従来の検索順位の獲得とは異なる新しい評判形成の考え方です。

自社チャネルと顧客接点の強化

検索エンジン経由のアクセスが減る以上、自社が直接管理できる顧客接点の価値が高まります。サイトへの流入が減ると、新規顧客との接触機会だけでなく、行動データなどの貴重な情報を取得する機会も失われます。こうした状況で力を発揮するのが、ロイヤルティプログラム(優良顧客向け特典制度)などの自社チャネルです。一度購入した顧客をリピーターに育て、より深い顧客理解を得られると指摘されています(参照*8)。

そもそも、アクセス数そのものを追いかけるマーケティングは効率が良くないという見方もあります。サイト訪問を増やすことではなく、サイト外で人々が触れる体験そのものを改善することが成果につながるという考え方です(参照*11)。

メールマガジン、アプリ、自社SNSアカウントなど、検索エンジンを介さずに顧客と接触できるチャネルを複数持つことが、ゼロクリック問題に対する構造的な備えになります。

評価指標の再設計

ゼロクリック問題が進行する環境では、従来のようにサイトへの流入数やクリック数だけで成果を測る方法が現実に合わなくなっています。AIとの対話を通じて自社の情報に触れるユーザーは、リンクをクリックしなくても認知や検討の段階を進めている可能性があります。

SEOの専門家からも、「クリックを伴う直接の流入だけを計測できるが、AIが生成する対話の中に自社が登場すること自体に大きな価値がある」という指摘が出ています。それは必ずしもクリックにつながらないものの、顧客がたどりうるすべての接点に自社を存在させることがポイントだという考え方です(参照*8)。

流入数に加えて、AIでの引用回数やブランド名の検索回数の推移、SNSでの言及量といった指標を組み合わせることで、ゼロクリック時代のマーケティング成果をより実態に近い形で捉えられるようになります。

企業・メディアの対応事例

企業・メディアの対応事例

旭化成のAI可視化広報

BtoB企業によるゼロクリック問題への先行的な取り組みとして、旭化成が2025年に開始した「PR for AI visibility」が挙げられます。これは「AIに参照されるための広報」を意味する社内施策です。生成AIの活用が進むなか、潜在顧客が発注先を選定する際の初期調査でAIの回答を参照する場面が増えると見込み、AIの回答における自社の露出確保やAIからの推奨獲得をBtoBマーケティングの新たな焦点に据えました(参照*9)。

従来の広報活動がメディア掲載や検索順位を目標としていたのに対し、旭化成の取り組みは「AIの回答に自社が登場するかどうか」を指標に加えた点で新しいアプローチです。ゼロクリック問題をリスクとして受け止めるだけでなく、AI上でのブランド露出を能動的に獲得しようとする姿勢は、BtoB領域の他社にとっても参考になる事例です。

報道機関の協業と法的対抗

ゼロクリック問題の被害を最も強く受けている報道機関は、法的手段による対抗にも動いています。2025年8月、読売新聞社は生成AI事業者のPerplexity AIを相手取り、著作権侵害および不正競争防止法違反で東京地裁に提訴しました。AIが生成する回答に記事内容が無断で再利用されていたとの主張です。その後、朝日新聞社と日本経済新聞社も同様の理由で共同提訴に踏み切りました(参照*2)。

海外でも、2,000以上の報道機関を代表するNews/Media Allianceのトップが「Googleは私たちのコンテンツを対価なく使い、検索から完全に消える以外に実質的なオプトアウト(拒否)手段を提供していない。同じコンテンツを使って私たちと競争している」と批判しています(参照*3)。コンテンツ制作者が適正な対価を得られなければ、制作そのものが止まり、結果として情報の質全体が低下するという懸念も出ています(参照*6)。

法的対抗と並行して、AIプラットフォームとのライセンス契約を模索する報道機関も増えつつあります。ゼロクリック問題をめぐる著作権と情報流通の在り方は、メディア業界全体の収益構造を左右する論点として今後も議論が続く見通しです。

おわりに

ゼロクリック問題は、検索エンジンがAI機能を拡充するほど進行する構造的な変化であり、業種を問わず対策が求められます。押さえるべきポイントは、構造化データやE-E-A-Tの強化によるAI引用の獲得、一次情報の発信、指名検索を増やす評判形成、自社チャネルの整備、そして評価指標の再設計の5つです。

どれかひとつで解決する特効薬はなく、自社の流入構成やターゲット層に合わせて複数の施策を組み合わせることが欠かせません。まずは自社サイトの流入キーワードのうち情報収集型がどの程度を占めるかを確認するところから始めてみてください。

監修者

安達裕哉(あだち ゆうや)

デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))

参照

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