2026年後半の生成AIトレンド予測:エージェント+マルチモーダルが仕事と生活を変える

2026.07.13

WorkWonders

エージェント化で激変する生成AI、2026年後半トレンド予測

本記事の要点

2026年後半の生成AIは、単なる会話の相手から、自分で考えて動く「エージェント」へと役割を広げます。ここでは、後半戦のトレンド予測を短くまとめます。

  • 業務ソフトの中でAIが実際に仕事を進める「エージェント型」への移行が進みます
  • 画像・音声・動画をまたぐ生成が高度化し、来歴管理の仕組みが広がります
  • 物理や化学など科学研究の分野で、専用の基盤モデルが成果を出し始めます
  • EU AI Actなどの規制対応と、企業のガバナンス整備が同時進行します

生成AIの現在地と後半戦の潮流

生成AIの現在地と後半戦の潮流

エージェント化とマルチモーダルの融合

生成AIの流れは、対話するAIから、自分で動くAIへと軸足を移しています。

企業向けソフトの購買調査では、生成AIは主にエージェント経由で提供されると考える買い手が38.8%にのぼり、生成AIの機能をソフト選定の最上位基準に置く回答は45.7%を占めました(参照*1)。大手クラウド事業者は、AIエージェントが目的を先読みし、複雑な業務プロセスを自ら組み立てる「エージェント型企業」の段階に入ったと位置づけ、直近1年で1兆トークンを超える処理を行った顧客が230社以上にのぼると公表しています(参照*2)。

私がコンサルティングの現場で見ていても、この変化は数字以上に速い。以前は「AIに質問して答えをもらう」という使い方が中心でしたが、今は「AIに仕事を渡して結果だけ受け取る」という発想へ移りつつあります。つまり、後半戦では「AIが答えるか」よりも「AIがどこまで自律的に動くか」が評価軸になります。自社が使うツールの選定基準を、機能一覧からエージェントの実行能力へと切り替える視点が、いま求められています。

エンタープライズ導入の加速

エンタープライズ領域では、生成AIの日常利用と投資の両方が伸び続けています。

企業幹部を対象にした調査では、週1回以上の生成AI利用が82%(前年比+10ポイント)、毎日の利用が46%(同+17ポイント)まで拡大し、今後12カ月の予算増加を見込む回答は88%、うち10%以上の増額を見込む層が62%となりました。ROIを正式に計測している企業は72%で、生産性向上と追加利益に注目が集まっています(参照*3)。

この数字が意味するのは、生成AIが試験導入の段階を抜け、投資判断の対象として定着したということです。私が企業への導入支援を続けてきた経験で言うと、ここで詰まるのはプロンプトでもモデル選定でもなく、「AIに何をさせるか」を業務レベルで定義できるかどうかです。費用対効果の議論を抽象的な期待値で終わらせず、具体的な利用頻度と効果測定に落とし込む段階に来ています。

個人利用の変質と身近な事例

業務での広がりと並行して、個人の使い方も変わってきました。

実際に、あるオープンソースのAIツールは2026年1月に公開されてから数週間で10万スターを超え、その後もGitHubで累計34万6000スター、ウェブサイト訪問者3800万人、ユーザー320万人を集めた事例が報告されています(参照*4)。同時に、生成AIが従業員のスキルを底上げすると考える人は89%を占める一方、利用が広がるほど43%がスキルの低下リスクを感じているという声もあります(参照*3)。

この二面性は、私自身も日々感じています。AIを使えば使うほど便利になる一方で、自分で考える機会が減っていないかを意識しないと、判断力が鈍る。個人利用でも「使い方の設計」が問われます。日々の作業に組み込む前に、AIに任せる範囲と自分で考える範囲をあらかじめ言語化しておくと、判断がずっと安定します。

エージェント型AIが変える業務基盤

エージェント型AIが変える業務基盤

Oracle Fusion Agentic Applicationsの狙い

業務ソフトの世界では、エージェント型の新カテゴリが登場しています。

2026年3月、Oracleは複数の専門AIエージェントがチームを組んで働く新しい業務アプリ群「Fusion Agentic Applications」を発表し、成果志向・先読み型・推論ベースの実行を掲げ、22種類の新アプリを提供開始しました(参照*5)。開発責任者は、企業向けAIが助言役や副操縦士から実際に仕事を実行する存在へ移ると述べ、初期テストではサポート業務で最大40〜50%の時間短縮が確認されたとしています(参照*6)。

この動きから読み取れるのは、業務アプリの評価軸が「機能の有無」から「アプリ自体がどれだけ仕事を進めるか」に変わってきたことです。40〜50%という数字は大きく見えますが、重要なのはその前提となる業務設計です。私が導入支援で必ず確認するのは、対象業務の入力と出力が明確か、判断ルールが言語化できているか、という点です。そこが曖昧なまま導入しても、便利な実験で終わります。

Google Cloud Next ’26と業界別実装

業界別のエージェント実装も、具体的な事例が積み上がってきました。

大手クラウドの顧客の75%がすでに同社のAI製品を業務に使い、直近1年で230社以上が1社あたり1兆トークンを超える処理を行ったと発表されています。世界有数のカストディ銀行であるBNYが、Gemini Enterpriseを使って世界中の従業員の深い調査業務を加速させている例も挙げられました(参照*2)。金融分野では、JPMorgan Chaseなどが不正検知、個別の資産アドバイス、ローン審査や法務・コンプライアンス処理の自動化にAIエージェントを試しており、小売のWalmartはパーソナルな買い物体験を自動化する大規模言語モデル(LLM)搭載エージェントを構築中です(参照*7)。

これらの事例が示すのは、汎用の会話ボットではなく、業界固有の業務フローに沿ったエージェントが競争の中心になっているということです。逆に言えば、業務を言語化できない企業は、どれだけ優れたモデルを使っても成果に結びつきにくい。自社で応用を考えるなら、反復頻度が高く判断ルールが明確な業務から始めるのが現実的です。

ツールから「アクター」への転換

エージェント型AIの本質は、位置づけの転換にあります。

研究者の整理では、AIエージェントは「ツール」から「アクター(行為者)」へと役割を変え、人間は境界線を引く役に回り、「ガードレール・エージェント」がリアルタイムで高リスクな行動を物理的に遮断する仕組みが導入されつつあります。企業ではすでに、市場の監視、取引先との交渉、物流のルーティング、取引の承認、ITインシデントの復旧、他のソフトウェアエージェントとの連携を、人の介入なしで進める自律エージェントが稼働し始めています(参照*8)。

ここで重要なのは、AIを「便利な道具」と見る発想では管理しきれない領域が広がっているという事実です。私が導入相談を受ける中で感じるのは、セキュリティやガバナンスの議論が後回しになりがちだということ。運用設計の段階で、AIが取ってよい行動と取ってはいけない行動を業務ごとに明文化することが、後から大きな事故を防ぐ最短ルートです。

マルチモーダルと来歴管理の進化

マルチモーダルと来歴管理の進化

ハイパーリアル生成と情報整合性リスク

画像や動画の生成品質が現実と見分けにくくなり、情報の真偽が課題になっています。

NISTの報告では、現在と近い将来のマルチモーダルモデルは、テキストによる偽情報だけでなく、高精度のディープフェイク、つまり合成された音声・映像や写真そのもののような画像の生成を可能にすると指摘されました。同報告は、来歴メタデータには、生成AIの開発者や制作者、作成日時、場所、変更履歴、素材の出所などを含めることができると整理しています(参照*9)。

私が問題だと思うのは、文章が自然であることと事実として正しいことが別物であるのと同様に、画像や動画が本物らしく見えることと実際に本物であることは別だという点を、多くの人がまだ意識できていないことです。生成物の見た目だけで真偽を判断する時代は終わりつつあります。情報を扱う現場では、コンテンツそのものと、その背後にある来歴データをセットで確認する運用に切り替える必要があります。

SynthIDとC2PAの実装展開

来歴管理の具体策として、電子透かしと来歴メタデータの実装が広がっています。

Google DeepMindのSynthIDは、AIが生成した画像や動画に対して、画質を変えない見えないデジタル透かしを生成の瞬間に埋め込みます。この透かしは、切り取り、フィルター追加、フレームレート変更、非可逆圧縮などの改変に耐えるよう設計されています(参照*10)。一方、AdobeのContent Authenticity Initiative(CAI)は、C2PA(コンテンツの出所と真正性のための連合)の技術規格に沿ったツールを整備しています。Content Credentialsと呼ばれる暗号化された改ざん検知メタデータは、視聴者がコンテンツの来歴を理解し、ブランド資産の整合性を保つ助けになると説明されています(参照*11)。

これらの仕組みは、生成物の信頼を「作った側」からたどれるようにするものです。AIで生成したコンテンツを外部に出すことは、文章作成の問題であると同時にリスク管理の問題でもあります。制作や広報の担当者は、対応ツールでの書き出しと来歴情報の付与を、標準の作業手順に組み込んでおくべきでしょう。

科学研究を書き換える生成AI

科学研究を書き換える生成AI

物理・化学・材料領域での基盤モデル

科学研究の現場でも、生成AIの基盤モデルが成果を上げ始めています。

スタンフォードHAIの報告によると、Web of Scienceデータベース上で自然科学分野のAI関連論文は、2024年の6万3547本から2025年には約8万150本へと、およそ26%増えました。汎用物理トランスフォーマー(GPhyT)は1.8TBのシミュレーションデータで訓練され、専門特化モデルと比べて最大29倍の性能を示し、訓練データにない物理問題にも、タスクごとの追加学習なしで対応したと報告されています(参照*12)。

この結果は、物理のように法則が明確な分野で、生成AIが専用モデルを上回る汎化能力を持ちうることを示します。私が注目しているのは、「訓練データにない問題にも対応できる」という点です。従来の専用ソフトは想定外の問いに弱かった。研究計画を立てる立場では、既存の専用ソフトと基盤モデルのどちらが自分の課題に近いか、あらためて比較する余地が生まれています。

AI Co-scientistとマルチエージェント研究

研究支援では、複数のAIエージェントが役割を分担する形が広がっています。

同じスタンフォードの報告では、ProtAgentsによる新規タンパク質の設計、Virtual LabによるSARS-CoV-2向け抗体候補92種(うち9割超が標的への結合に成功)、OriGeneによるがんの新規標的GPR160とARG2、MOFGenによる新規の金属有機構造体5種、ChemCrowによる新しい発色団など、公表された成果が挙げられました(参照*12)。

これらは、AIが仮説生成、実験計画、候補選定などを分担しながら実際の発見に結びついている事例です。ここでも、単一のモデルに丸投げするのではなく、役割別のエージェント構成が成果を上げています。業務でも研究でも、AIの使い方の本質はここにあると私は見ています。何をAIに任せ、何を人間が判断するかを設計できるかどうかです。

規制・ガバナンスの分岐点

規制・ガバナンスの分岐点

EU AI Actの適用と延期論議

ヨーロッパでは、AI規制の適用時期が現実の論点になっています。

欧州委員会の公式情報によると、EU AI Actは2024年8月1日に発効し、2026年8月2日に全面適用となる予定です。透明性に関する規則は2026年8月から適用され、生体認証、重要インフラ、教育、雇用、移民、亡命、国境管理などの高リスク領域に関する規則は2027年12月2日から適用される見通しです(参照*13)。改革交渉の遅れにより、Annex IIIの高リスクシステムは当初の2026年8月2日の期限どおりの遵守を求められる可能性が指摘されました。オランダ選出の欧州議会議員は、大手テック企業が有利になり、安全を重視して準備してきた欧州企業が規制の混乱に直面していると述べています(参照*14)。

欧州市場に関わる企業にとって、期限に合わせた対応は避けられません。私が気になるのは、規制対応を「コスト」として捉えるか「信頼の設計」として捉えるかで、その後の競争力が変わるという点です。自社製品の分類とデータ管理を、規則の対象領域と照らして早めに点検しておくことが重要です。

NIST・CSAが示すエージェント統制

エージェント時代のセキュリティ課題も、具体的な数字で示されています。

CSAが1500人超のセキュリティ責任者を対象にまとめた調査では、92%の組織がAIエージェントのセキュリティ影響を懸念する一方、多くがAIセキュリティ統治に大きなギャップがあると回答しました。Gartnerは、企業アプリケーションのうちタスク特化型AIエージェントを組み込むものが、2025年の5%未満から2026年末には40%に達すると予測しています(参照*15)。米国国立標準技術研究所(NIST)の資料は、生成AIベースのシステムが2つの主要な情報セキュリティリスクを持つと整理しました。攻撃能力の自動化のハードルを下げて新しいサイバーリスクを生む可能性と、プロンプトインジェクションやデータ汚染などに対して脆弱であることによる攻撃対象の拡大です(参照*9)。

エージェントの導入速度と安全管理の整備速度に開きがある、というのは私も実感しています。プロンプトインジェクションは特に見落とされやすいリスクで、従来のWebアプリとは違う防御の発想が必要です。導入計画では、機能検討と同じ比重で、権限設計と監査の仕組みを最初から組み立てることを強くお勧めします。

個人レベルでの活用展望

個人レベルでの活用展望

コンテキスト・マキシングと認知エージェンシー

個人利用のトレンドとして、AIに文脈を十分に渡す「コンテキスト・マキシング」という考え方が広がっています。

Brookingsの論文は、この考え方を紹介したうえで、認知エージェンシーを「人がAIとともに考え行動し、自分の制御・効力感・熟達を保つ力」として提案しました。同論文では、2026年1月に公開された「OpenClaw」というオープンソースのAIツールが数週間で10万GitHubスターを超え、その後累計34万6000スター、ウェブサイト訪問者3800万人、ユーザー320万人に達した事例も紹介されています(参照*4)。

私が日々AIを使う中で強く感じるのも、この「文脈をどれだけ渡せるか」が出力品質を決めるという点です。抽象的に「良い記事を書いて」と頼むのと、目的・読者・主張・制約を分けて渡すのとでは、結果が全く変わります。個人がAIをうまく使うには、丸投げでも拒否でもなく、状況や目的をどこまで共有するかを自分で設計する姿勢が求められます。

日常ルーチンへの組み込み方

個人の日常への組み込みは、業務データからも姿が見えてきます。

企業幹部の調査では、週1回以上の生成AI利用が82%、毎日の利用が46%に達し、89%が生成AIは従業員のスキルを底上げすると回答した一方、43%は利用増に伴うスキル低下のリスクを感じています(参照*3)。

頻度を上げるだけでは十分ではない、というのは私自身も経験から言えます。AIに任せる作業と自分の頭で処理する作業を意識して分けておかないと、いつのまにか判断する機会が減っていきます。日々のルーチンでは、週単位で「どこをAIに任せ、どこを自分でやったか」を振り返る習慣が、長期的なスキルの維持につながると考えています。

おわりに

2026年後半の生成AIは、対話するツールから、業務を実際に進めるエージェントへと軸足を移します。マルチモーダル生成の高度化、来歴管理、科学研究への浸透、規制対応が同時に進むため、機能の魅力だけでなく、運用と統制の設計が導入判断の鍵になります。

私がこの変化で最も重要だと考えるのは、「AIに何をさせるか」を業務レベルで言語化できるかどうかです。エージェントが自律的に動く時代には、設計の精度がそのまま成果とリスクの両方に直結します。個人の使い方も、頻度を上げるだけでなく、任せる範囲と自分で考える範囲を意識的に分ける段階に来ています。AIとの役割分担を言葉にして整えておくことが、変化の速い流れの中で落ち着いて選択するための基盤になります。

監修者

安達裕哉(あだち ゆうや)

デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))

参照

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