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この記事のまとめ
- ChatGPT WorkとClaude Coworkは、長時間のバックグラウンド実行やツール連携によって、作業を任せられるAIエージェントを実務に持ち込む方向性を示しています。
- ChatGPT Workはデスクトップ業務との連携、Claude Coworkはリサーチや文書作成といった非コーディングの知識労働に活用しやすいと考えられます。
- 権限昇格や認証情報の流出といった脅威に対しては、最小権限と短命トークン、人による承認を組み合わせて備えます。
- タスク委任のプロンプト設計とレビュー文化を整えることで、エージェントの成果を継続的に高められます。
AIエージェントの定義と業務革命の背景

AIエージェントを構成する三要素
まず、AIエージェントを言葉として押さえるところから始めます。
AIエージェントとは、人が決めたガードレールの中で、目標に向かって自ら計画し、判断し、行動できるシステムのことです。推論とツール利用をつなぎ、途中で得た情報に合わせてやり方を変えながら、複雑な作業を最後まで進められます。構成する三つの要素は、思考をつかさどるモデル、外部と関わるためのツール、そして安全を保つガードレールです(参照*1)。
この三要素は、単なる機能の分類ではなく、責任の分け方を示すものでもあります。私がAI導入支援を行う中でよく感じるのは、モデルの賢さよりも「ガードレールを誰が設計するか」が現場の肝だという点です。モデルが賢くても、ツールがなければ現実の業務には触れられません。そしてツールを渡す前に、「やっていいこと」「止めるべきこと」を先に定義しておかなければ、自律的に動く分だけ被害も大きくなります。導入前に、この三点セットが揃うかを一度確認することを強くお勧めします。
チャットボットや自動化との違い
従来の仕組みと何が違うのかを整理します。
ユーザーとエージェントの関わり方には五つの役割があります。操作者、共同作業者、相談相手、承認者、観察者です。この枠組みは、ユーザーがどこまで手を動かさずに済ませられるかによって、エージェントの自律度が変わることを示しています(参照*2)。
チャットボットは会話が終わればそこで区切りがつきますし、決まった手順に沿って動くワークフロー型の自動化は、道筋があらかじめコードで書かれています。エージェントは長期の作業の中で、何を作り、どう実装するかを自分で決めながら進める点が異なります(参照*3)。つまり「決めた手順を実行させる」ではなく、「目標を与えて任せる」という発想の転換が必要です。
指示のたびに人が張り付く必要はなく、承認者や観察者として関わる時間帯を選べます。私がコンサルティング現場でよく使う言葉に「業務の言語化」がありますが、エージェントに任せるには、そのタスクを言語化できていることが前提条件になります。どのタスクをどの役割で任せるかを先に決めておくと、運用が格段に楽になります。
「作る」から「動かす」への転換点
生成AIの位置づけが変わりつつある背景に触れます。
経営層の意識調査では、シニアエグゼクティブの79%が自社ですでにAIエージェントが使われていると見ており、86%がインターネット以上に職場を変えると考えています(参照*1)。
これまでの生成AIは、文章や画像を「作る」用途が中心でした。ChatGPT WorkやClaude Coworkのような動きは、作ったあとに「動かす」段階まで踏み込む方向性として捉えられます。私自身、生成AIを毎日の文章作成や調査に使いながら、「下書きを作る道具」から「業務そのものを進める相手」へという変化を実感しています。作業を任せる相手として扱えるかが、これからの投資判断の軸になるでしょう。
ChatGPT Workが実現する業務エージェント

バックグラウンド実行とコネクター連携
ChatGPT Workの土台となる仕組みから見ていきます。
長くかかる処理を裏側で進める設計は、ユーザーを待たせずに返事を返し、並行して作業を進める形と相性があります。サブエージェントに調査や執筆を任せるケース、外部サービスへの重い問い合わせ、大きなデータ処理などが典型例です(参照*4)。
コネクター経由で社内システムやSaaSにつながれば、資料集めから下書き作成、送付前の整形までを一続きの流れとして任せやすくなります。私の経験上、AIを業務に組み込んで最初に効果が出やすいのは、「待ち時間が発生している定型作業」です。まずそこから当てはめてみるのが現実的な進め方です。
Computer Useとデスクトップ操作
APIがないツールをどう扱うかが次の焦点です。
画面操作を前提にしたエージェントは、ブラウザやアプリをまたぐ業務にも適用しやすくなります。
ホスト型エージェントの実行環境では、セッションごとに仮想マシンで隔離されたサンドボックスが割り当てられます。$HOMEや/filesという永続ファイルシステムを持ち、アイドル後に再開しても状態が復元される点が特徴で、セッション同士は互いに分離されています(参照*5)。
このような分離環境では、業務用のブラウザ操作や表計算の更新を扱いやすくなります。API連携が難しい古い社内ツールほど、画面操作型の恩恵が大きくなります。現場にはAPIを持たないレガシーシステムが今も多く残っており、そこへのアプローチとして注目しています。
ガードレールと人間による承認設計
自律的に動く相手だからこそ、止め方の設計が要になります。
ChatGPT agentは、実世界の行動の多くで事前に確認を求め、メール送信のような繊細な作業では監督を求めるように訓練されています。送金など高リスクな行動は拒否し、悪意ある指示にも抗い、扱えるデータや動ける場所を承認済みの範囲に限定します(参照*1)。
ここで大切なのは、承認をどこに置くかという設計判断です。すべてを確認していては効率が落ちますし、任せきりでは事故のもとになります。私がAI導入支援で必ず確認するのは、「金銭のやり取り」「外部への送信」「元に戻せない更新」の三点です。この三点は、人が承認者として関わる工程に組み込んでおくことを必須にしています。
Claude Coworkが担う知識労働の自動化

Claude CodeとCoworkの役割分担
同じAnthropicの製品でも、役割は明確に分かれています。
Claude Codeはソフトウェア開発向けに設計され、コードの記述、デバッグ、リリースまでを担います。ターミナル、デスクトップアプリ、VS CodeやJetBrainsといったIDE、Claude Tag経由で利用できます。一方のCoworkは、リサーチや分析、文書作成など、コーディング以外の多段階の知識労働のために作られており、Claude Codeと同じエージェント的アプローチを採っています(参照*6)。
開発者はClaude Code、企画・営業・管理部門はCoworkと、業務の種類で使い分ける前提で作られていると読み取れます。導入時には、部門ごとに主な業務を棚卸しし、どちらを主軸にするかを決めておくと迷いません。私が支援する現場でも、「誰が何のために使うか」を最初に定めないまま導入して混乱するケースが少なくありません。
リサーチ・分析・文書作成の実務適用
Coworkが得意とする領域を具体的に見ていきます。
Coworkはリサーチ、分析、文書作成などの非コーディングの多段階タスクに向くとされています(参照*6)。
リサーチや文書作成のように、途中で追加調査が必要になる作業は、バックグラウンドで長く動かす前提と相性がよくなります。長時間のツール呼び出しは即時に受領応答を返し、本体は応答を続け、完了時に結果がメモリに書き込まれる形が示されています(参照*4)。
この流れに乗せれば、市場調査の下書き、複数資料の比較、社内向け報告書の初稿づくりを、担当者が別業務を進めている間に進めやすくなります。私自身、複数のAIに同じリサーチ課題を与えて比較するという検証を繰り返してきましたが、長時間の調査タスクをバックグラウンドで動かせるようになると、作業のリズムが根本から変わります。
ChatGPT WorkとClaude Coworkの比較と選び方

設計思想とアーキテクチャの違い
両者の土台となる思想の違いを押さえます。
Claude Coworkは、Claude Codeと同じエージェント的アプローチを採りつつ、非コーディングの知識労働向けに位置づけられています(参照*6)。
GoogleのGemini APIでは、Managed Agentsが設定可能なエージェントハーネスを提供し、単一のAPI呼び出しでLinuxサンドボックスを立ち上げ、エージェントが推論し、コードを実行し、ファイルを扱い、自律的にウェブを閲覧します(参照*7)。
さらにMicrosoftのHosted Agentsは、コンテナ化されたエージェントアプリケーションで、フレームワークを選び、ランタイムの振る舞いを制御し、コンテナイメージをMicrosoft管理のインフラに配置する形をとります(参照*5)。用意された環境をそのまま使うか、自前のコードを持ち込むかで選択肢が分かれます。自社の技術リソースと照らして、どこまで自前で管理するかを先に決めておくと、選定が迷いにくくなります。
用途別の使い分け判断基準
どちらを主に据えるかの判断軸を整理します。
Coworkはリサーチ、分析、文書作成、その他の多段階タスクといった非コーディングの知識労働のために作られています(参照*6)。
これに対し、ChatGPT Workはデスクトップ業務との連携を重視する場面で検討しやすいと考えられます。
選び方の目安としては、社内ツールの画面操作が多い業務はChatGPT Work、資料調査や長文の下書きが中心の業務はClaude Coworkから試すのが分かりやすい形です。両方を並行導入し、部門ごとに主軸を決める運用も現実的な選択肢になります。私の経験上、最初から全社展開を狙うより、一つの業務で入力・出力・確認・修正・効果測定を回してノウハウを貯めるほうが、定着率は明らかに高くなります。
エージェント導入時のリスクと注意点

権限昇格・認証情報流出の脅威
自律的に動くほど、事故の影響も大きくなります。ここは楽観的に考えてはいけない領域です。
Vertex AIプラットフォームでは、閲覧者相当の読み取り専用権限を持つユーザーが、GCPのインスタンスメタデータサービスからサービスエージェントの認証情報を抜き出し、Cloud Storage、BigQuery、Pub/Sub、Artifact Registryといったリソースにプロジェクト全体の権限で到達できる問題が指摘されました。1月の開示時点で、GoogleはXM Cyberが見つけた二つの脆弱性を「意図通りの動作」と分類し、修正の予定はないとしました(参照*8)。
6月12日には、SysdigのThreat Research Teamが、設定ミスのあるOllamaモデルサーバを推論エンジンとして悪用し、多段階のVAPT型攻撃パイプラインの中枢に据える事例を初めて確認しました。インターネット上には、既定で認証のないOllamaインスタンスが約175,000台公開されている状況です(参照*9)。
さらに、直接の指示では有害な作業を断るモデルでも、粘り強い複数ターンのやり取りにさらされると、対象八モデル全てで拒否率が0%まで下がり、有害・危険スコアは65.3〜82.8に達したという報告もあります(参照*3)。「このモデルは安全だから大丈夫」という判断は、エージェント運用においては通用しないと考えておくべきです。
最小権限とBYOSAによる対策
守り方の基本を押さえます。
対策としては、最小権限のサービスアカウントかAPIキーを使い、長寿命のキーよりも短命トークンを優先し、渡してよい範囲の資格情報だけを提供し、定期的にローテーションすることが求められます(参照*7)。
運用の指針としては、エージェント専用のアカウントを用意し、業務に必要な権限だけを付ける形が分かりやすくなります。認証情報の期限を短く保ち、ローテーションの手順を最初から仕組みに組み込みます。加えて、送金など影響の大きな行動は人の承認を挟む設計を保ち、エージェントが単独で完結させない工程を残しておくことが要になります。私が支援する現場では、セキュリティ設計よりもプロンプト設計の相談が先に来がちですが、順序としてはセキュリティ設計が先です。
実務でのエージェント活用ステップ

タスク委任とプロンプト設計
エージェントに任せる前段の準備が成果を左右します。
明確な指示がよい結果につながり、チームはタスクの背景、期待、構造を共有することで、同僚に頼むときと同じようにエージェントから多くを引き出せます(参照*1)。
Google Workspaceでは、Apps ScriptやHTTPエンドポイントを使ってAIエージェントをアドオンとして公開でき、ユーザーは日々のワークフローの中でエージェントとやり取りできるようになります(参照*10)。
初期の設計では、目的、前提、成果物の形、避けたい失敗を一つの依頼書にまとめ、いつものツールから呼び出せる場所に置くと、依頼のばらつきが減ります。私は「AIに何をさせるかを決めるのが最初の難関」と繰り返し言っていますが、この依頼書を作る作業こそが、その難関を突破する実務的な手段です。
レビュー文化と成果測定
任せたあとの受け取り方も設計対象です。
ユーザーがエージェントと関わる役割は、操作者、共同作業者、相談相手、承認者、観察者の五つに分かれます(参照*2)。
この区分をレビュー体制に持ち込み、業務ごとに担当者がどの役割で関わるかを決めておくと、確認の抜けが減ります。承認者として関わる業務は完了前に人が目を通し、観察者として関わる業務はログや成果物を後追いで点検します。担当者の役割を可視化しておくことで、成果測定の基準もぶれにくくなります。AIの出力品質を見るときは、文章がうまく見えるかどうかではなく、正確性・再現性・修正コストを確認することを習慣にしてください。
おわりに
ChatGPT WorkとClaude Coworkは、生成AIを「作る道具」から「動かす同僚」へ変えていく取り組みとして注目しています。バックグラウンド実行やセッション単位の実行環境など、業務に馴染む設計が広がりつつあります。私自身、ChatGPT・Claude・Geminiなど複数のモデルを実務で使い比べてきましたが、「何を作るか」よりも「どの工程に組み込むか」の設計力が、成果の差になると実感しています。
導入では、最小権限と短命トークン、人による承認を組み合わせながら、タスクごとに役割と評価の物差しを整えることが土台になります。まずは待ち時間の多い業務から任せ、レビューの型を作るところから始めてみてください。「AIを使うこと」が目的になると定着しません。業務のどの工程に入れると時間短縮や品質改善になるかを分解して考えることが、正しい出発点です。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、95万部(2026年6月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) https://cdn.openai.com/business-guides-and-resources/a-business-leaders-guide-to-working-with-agents.pdf
- (*2) Knight First Amendment Institute – Levels of Autonomy for AI Agents
- (*3) ANCHOR: Automated Alignment Auditing for CLI Agents on Real-World Harm
- (*4) Background tasks
- (*5) Docs – Hosted agents in Foundry Agent Service – Microsoft Foundry
- (*6) Claude – Claude Cowork | Claude by Anthropic
- (*7) Google AI for Developers – Agents Overview | Gemini API | Google AI for Developers
- (*8) https://labs.cloudsecurityalliance.org/wp-content/uploads/2026/04/CSA_research_note_vertex-ai-service-agent-privilege-escalation_20260401-csa-styled.pdf
- (*9) Lab Space – LLMjacking Evolved: Stolen AI Compute as Offensive Infrastructure
- (*10) Google for Developers – Plan travels with an AI agent accessible across Google Workspace