日本政府ガバメントAI源内、20種類のAIアプリで職員8割が効率化

2026.08.26

WorkWonders

日本政府ガバメントAI源内、20種類のAIアプリで職員8割が効率化

この記事のまとめ

日本政府はデジタル庁を中心にガバメントAIの整備を進めており、その第一歩として生成AI利用環境「源内」を各府省庁へ展開しています。行政実務用のAIアプリだけでも20種類以上をそろえ、職員の約8割が業務効率化を実感しました。今後は18万人規模の展開とオープンソースソフトウェア(OSS)公開により、民間や地方自治体への波及も見込まれています。

  • 源内はガバメントAIの一部で、デジタル庁が内製した生成AI利用環境です。
  • 行政実務用AIは20種類以上あり、法制度調査や国会答弁検索などを支援します。
  • デジタル庁内の3か月検証では約950人が利用し、約8割が効率化を実感しました。
  • 2026年4月にはOSS公開が始まり、地方自治体や民間への波及が進みます。

ガバメントAI源内の定義と背景

ガバメントAI源内の定義と背景

ガバメントAIと源内の関係

ガバメントAIと源内は、基盤全体とその一部という関係にあります。この区別は、政策文書を読むうえで意外と重要です。

ガバメントAIは、政府職員が安心してAIを使えるようにするための基盤全体を指します。デジタル庁はガバメントAI構築の第一歩として、生成AI利用環境である源内を各府省庁へ展開しています(参照*1)。

ガバメントAIは単独のシステムではなく、行政業務で使う多彩なアプリやクラウド環境、大規模データセット、活用事例集、セキュリティ対策、運用ノウハウ、リスク管理体制までを束ねた統合的な構想です(参照*2)。

源内は、ガバメントAIという大きな枠組みの中にある生成AIの入口です。両者は同じものではなく、源内はガバメントAIの一部として位置づけられています。私自身、生成AI導入の支援をしていると「AIを導入した」という言葉が、ツール一つを指しているのか、体制やルールごと変えたのかで話の粒度がまったく変わることに気づきます。源内とガバメントAIの関係も、まさにその構図です。

源内という名称の由来

源内という名前には、二つの意味が込められています。

デジタル庁の解説によれば、源内は政府全体の基盤であるガバメントAIの取組の一部として、同庁が内製で作った生成AI利用環境を指します。Generative AIを略したGen AIを「ゲンナイ」と読ませつつ、江戸時代の発明家である平賀源内の精神も重ねて命名されました(参照*2)。

呼び名の由来を知ると、単なる略語ではなく、発明家の姿勢を政府職員自らが引き受けるという意思が伝わります。こういった命名の工夫は、現場の職員が「使ってみよう」と思う心理的な後押しになる点で、侮れません。名称に込められた意図を押さえると、「隗より始めよ」の方針とも自然につながって読めます。

AI法・AI基本計画と『隗より始めよ』

源内の展開は、AI法と人工知能基本計画の方針に沿って進められています。

2025年5月には人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律、いわゆるAI法が成立しました。これに基づき、同年12月には人工知能基本計画が閣議決定されています(参照*1)。

内閣官房の資料は、日本でのAI利活用を促すために「隗より始めよ」の考え方から、まず政府自らが積極的かつ先導的に利活用し、職員によるAIの普段使いを浸透させ、業務の質を高める方針をまとめました(参照*3)。

背景には人口減少と少子高齢化があります。公共サービスを維持し強化していくには、政府と地方公共団体が生成AIをはじめとするAIを積極的に使うことが避けて通れないと整理されています(参照*4)。法律・計画・掛け声の3点が重なり、源内が動き出す土台になっていると理解できます。民間でもまったく同じ構図があって、トップが旗を振るだけでは動かず、ルールと予算と試用の場が三拍子そろって初めて現場が動く、という経験を私は何度もしてきました。

源内の全体像と提供アプリ

源内の全体像と提供アプリ

汎用AIアプリの機能

源内は、汎用AIと行政実務用AIの2種類を提供しています。

デジタル庁の説明によると、源内が用意するAIアプリは大きく2種類に分かれます。ひとつが汎用AIで、対話型チャット、文章作成、要約、校正、翻訳など、日常業務を幅広く支える道具群です。もうひとつが行政実務用AIで、職員の業務遂行を支える行政実務に特化したアプリ群として位置づけられています(参照*1)。

汎用AIは、メールの下書きや議事メモの整理、外国語資料の下訳など、部署を問わず出番があります。私が企業への生成AI導入を支援してきた経験からも、最初に「とりあえず使える場所」から入り、感触をつかんでから専門用途に広げるという順序は理にかなっています。まず汎用AIで生成AIの感触をつかみ、そのうえで行政実務用AIへ広げていくという使い分けが、源内の設計からも見えてきます。

行政実務用AIアプリの具体例

行政実務用AIは、業務ごとの困りごとに合わせて作り込まれています。

源内では、膨大な業務マニュアルから回答を導くアプリや、過去の国会答弁を検索できるアプリなど、行政実務に特化したAIアプリを20種類以上そろえ、庁内の全職員が使える形で提供されています(参照*5)。

具体例として、法制度調査支援AIのLawsyでは、財政会計六法から特定の条文を探す作業について、人が行うと半日かかる工程を2分で終えられるとされています(参照*5)。

このほかにも、国会答弁検索AIや公用文チェッカーAI、SEABISヘルプAIなど、日々の実務でよく発生する調べ物や表現チェックを支える顔ぶれがそろっています。半日から2分という数字は特定条文の検索作業を前提とした例ですが、業務のどこにAIを差し込むと大きく効くのかを考えるうえで参考になります。私が生成AI導入の相談を受けるとき、「何でもAIに」ではなく「どの工程を置き換えると効果が大きいか」を最初に決めるよう伝えています。源内のアプリ設計は、その発想を忠実に実装しています。

セキュリティと利用基盤

源内は、セキュリティと利便性の両立を図った利用基盤です。

源内は政府統一基準に準拠したセキュリティのもとで運用され、デジタル庁内では機密性2情報を含むプロンプト入力にも対応しています。あわせて、ガバメントソリューションサービス、いわゆるGSSを活用したポータルサイトからのシングルサインオンに対応し、セキュリティと利便性を両立させています(参照*1)。

なお、機密性2情報の入力対応はデジタル庁内での設定であり、各府省庁での取り扱いは各ルールに基づく点に注意が必要です。認証の入口を一本化しつつ、扱える情報の範囲を明確にする設計は、行政での生成AI活用を現実的なものにしています。

利用実績と効果、残る課題

利用実績と効果、残る課題

3か月検証の利用実績

2025年5月から7月の検証では、約950人が源内を利用しました。

2025年5月から7月の3か月間で、デジタル庁の全職員の約8割にあたる約950人が源内を利用し、通算の利用回数は6万5000回を超えました。利用した職員1人あたりの回数は平均70回で、日常的に呼び出されていた様子がうかがえます(参照*6)。

3か月で6万5000回という規模は、単発の試用ではなく、業務のなかに繰り返し組み込まれた使われ方を示しています。1人平均70回という数字は、週5日換算で週に6回弱に相当します。導入の成否を測るうえで、利用の広がりと頻度の両面を見る視点は重要です。私が企業のAI活用を評価する際も、「登録ユーザー数」よりも「1人あたりの使用回数」のほうが定着度を正直に反映すると考えています。

職員アンケートに見る効率化

職員アンケートでは、約8割が業務効率化への効果を認めました。

職員向けのアンケートでは、利用頻度として「週に数回」が多く、業務効率化への寄与について「ある程度寄与している」が57.3%、「非常に寄与している」が21.8%で、合わせて約8割が効果を認めました。満足度は5点満点中3.7、今後の必要性は同じく4.2と評価されています(参照*7)。

満足度3.7と必要性4.2の差は、まだ改善余地はあるものの、業務に必要な道具として位置づけられ始めていることを示唆します。効率化の実感が約8割に及んだ点は、次の展開に踏み出す根拠として重い意味を持ちます。ただ、私の経験では、こうした初期アンケートの数字は「使えた場面への評価」であって、「使えなかった場面の存在」は見えにくい傾向があります。課題がどこで起きているかは、次のセクションの利用格差の数字を合わせて見ることが重要です。

利用格差とハルシネーションなどの課題

源内には、利用格差や回答品質に関する課題も残っています。

同じアンケートでは、3か月間で100回以上使った職員が150人を超えた一方で、170人は5回未満にとどまりました。若手職員や民間出身の職員が積極的に使う傾向がある一方、課長級職員の約半数は利用実績がなかったと報告されています(参照*7)。

現場からは、回答のどの部分を根拠に要約したのかが分かりづらい、より新しく賢いモデルを使いたい、処理できる文章量が足りない、ファイル容量を大きくしてほしい、参照先を示しても誤った回答が出ることがある、といった声が挙がっています(参照*8)。

利用格差は、役職や経験による生成AIの受け止め方の差を映しています。私が企業への導入支援をしていて実感するのも、まったく同じ傾向です。若手や技術系の職員は積極的に使い、管理職層は「自分が使うもの」とまだ思っていない。参照先を示しても誤答が出るハルシネーションや文章量の上限といった技術的な制約も残るため、活用範囲の見極めと役職層への浸透策の両方が今後の焦点になります。生成AIの難しさは、モデルの性能よりも組織の意思決定と定着にある、というのが私の一貫した見方です。

国内LLM活用とOSS公開

国内LLM活用とOSS公開

国内LLM公募と選定企業

ガバメントAI向けの国内大規模言語モデル(LLM)は、5社と契約が結ばれました。

内閣官房の資料によると、ガバメントAI向けの国内大規模言語モデルの公募・選定結果が2026年5月29日に報道発表され、15件の応募に対して審査の結果、国内企業5社との間で契約が結ばれました(参照*9)。

契約先には、株式会社NTTデータのtsuzumi 2、ソフトバンク株式会社のSarashina3 mini、日本電気株式会社のcotomi v3、富士通株式会社のTakane 32B、株式会社Preferred NetworksのPLaMo 2.0 Primeが挙げられました(参照*9)。

個別の採用も進んでおり、デジタル庁はPreferred Networksが開発するPLaMo翻訳を源内を通じて政府職員に提供することを決め、2025年12月中に庁内で利用を始め、2026年以降に他府省庁への展開を計画しています(参照*10)。海外モデル一辺倒ではなく、日本語や国内制度に強い国産モデルの層をそろえていく姿勢が見えます。私自身も複数のモデルを業務タスクごとに使い比べていますが、日本語の微妙なニュアンスや法令文書の読み解きは、国産モデルが有利な場面が確かに存在します。

源内OSS公開の内容

源内の一部は、商用利用可能なライセンスで公開されています。

デジタル庁は、源内のWebインターフェース部分のソースコードと構築手順、源内で使っている一部AIアプリの開発テンプレート・実装、行政実務用RAGの開発テンプレート、LLMをセルフデプロイして利用する開発テンプレート、最新の法律条文データを参照して回答する法制度に関するAIアプリの再現可能な実装を公開しました。それぞれAWS、Azure、Google Cloudといった主要クラウド向けに整えられています(参照*11)。

デジタル庁の解説記事は、中央省庁で展開中の生成AI利用環境である源内の一部を、商用利用可能なライセンスで公開したことを明らかにしました(参照*12)。

公開範囲はあくまで「一部」であり、源内のすべてが開かれたわけではありません。ただ、商用利用が可能なライセンスで主要クラウド向けのテンプレートがそろった意味は大きく、外部の技術者が同じ土台の上に自分たちの工夫を積み上げられます。ゼロから設計する手間が省けるだけでなく、行政が実際に使った構成を参照できる点が、民間にとっての実質的な価値です。

民間・地方自治体への波及

OSS公開は、地方公共団体や民間への波及を狙った取組です。

デジタル庁は、源内の一部をOSSとして公開することにより、地方公共団体や政府機関で起きうる類似のAI基盤の重複開発を防ぎ、社会全体の開発コスト削減に貢献するとしています。OSSは改変や再利用ができるため、特定の事業者やサービスへの依存を抑えつつ、各機関が自らの要件に応じてAI基盤を主体的に運用・発展させられるとまとめられました(参照*11)。

あわせて同庁は、中小企業やスタートアップを含む多様な企業が参入しやすい環境を整えることで、日本全体のAI産業の裾野を広げ、民間の創意工夫を生かしたサービスの多様化・高度化に貢献すると位置づけました(参照*11)。

地方自治体にとっては、ゼロから作らずに済む選択肢が増えます。民間側から見れば、同じ土台に沿った提案や導入支援が組み立てやすくなります。私がWebメディアやコンテンツ事業を運営してきた経験から言うと、共通基盤が公開されることで参入障壁が下がり、差別化の焦点が「作れるかどうか」から「何を作るか」へ移ります。行政向けサービス市場の競争の軸が、今後変わっていく可能性があります。

展開スケジュールとガバナンス

展開スケジュールとガバナンス

18万人展開のロードマップ

源内は、約18万人規模の本格利用に向けて段階的に展開されます。

デジタル庁の資料は、デジタル庁内における試験導入を2025年5月から始め、大規模実証事業を2026年5月から進め、最終的に源内を全府省庁の外局等を含む39機関、約18万人へ本格的に利用できるようにする段取りをまとめました(参照*13)。

海外の分析でも、日本の政府向け生成AI基盤である「Government AI Gennai」が、2026年1月の限定的なパイロットから2026年5月には省庁の10万人超へ広がる段階的なロールアウトに入り、2026年度予算措置の対象になっていると整理されています(参照*14)。

小さな試験導入から一部省庁の試用、大規模実証、そして本格運用へと段階を踏む設計は、私が企業への導入支援で勧めている進め方と基本的に同じです。全社一気に展開するより、小さな業務で入力・出力・確認・修正・効果測定のサイクルを回し、ノウハウを蓄えてから広げるほうが現実的に機能します。どのフェーズで何が起きているかを押さえておくと、報道された数字の意味も正確に掴めます。

CAIO設置とガバナンス枠組み

政府情報システムでの生成AI利用には、CAIOを軸とするガバナンス枠組みが設けられています。

日本政府は生成AIを使う政府情報システムに対して、各府省庁にAI統括責任者であるCAIOを置き、リスクの高さを3つの軸で判定し、高リスクと判断されたプロジェクトを先進的AI利活用アドバイザリーボードへ報告する仕組みを整えています(参照*15)。

従来のリスク判定では機密性2情報や個人情報を扱うだけで高リスク扱いになりがちでしたが、政府情報システムには既に厳格なアクセス制御があるため、改定案ではデータの機密性そのものよりも、生成AIが出力する情報の誤り、いわゆるハルシネーションが業務に与える影響度を重視する方向へ舵が切られています(参照*16)。

このガイドラインは政府情報システムを対象としており、民間を直接規律するものではありません。ただし、責任者を置き、リスクを軸で判定し、必要に応じて第三者的な視点で助言を受ける枠組みは、民間で生成AIの運用体制を考える際にも参考になります。生成AIの業務導入では、プロンプト設計よりも「誰が確認して、誰が責任を持つか」を決める工程のほうが、実際には難しいと私は感じています。CAIOという役職の設置は、その問いに組織として答えようとする試みです。

民間への波及と今後の展望

生成AI活用では、業務やデータのあり方を見直す視点が求められています。

デジタル庁の関係者は、生成AIの活用について「業務にAIを付加する」のではなく、「AIの仕組みや特長を前提に、業務やデータのあり方を検討する」という思考の転換が求められると述べています。ワークフローの見直しは容易ではないものの、果敢に取り組むべきだとまとめました(参照*2)。

内閣官房の資料は、大規模なアンケート調査におけるAIを活用した仮説の検証支援を農林水産省の事例として挙げ、通常は職員1人が約2か月かける分析作業を、AIの活用で約3日にまで短縮できたと明記しました(参照*3)。

政府調達を通じた国産AIの需要創出と、OSSを土台にした官民のつながりが重なると、民間にとっては行政と同じ土台で提案や実装を進めやすくなります。2か月が3日になった事例のように、業務プロセスそのものをAI前提で見直す動きが広がるかどうかが、今後の見どころです。私が企業のAI活用を支援してきて一貫して感じるのは、「業務にAIを付け足す」発想では成果が出にくく、「AIがある前提で業務を設計し直す」発想に切り替えた組織のほうが、大きく変わるということです。行政がその転換を先行して見せるインパクトは、民間にとっても小さくないと思います。

おわりに

日本政府が進めるガバメントAIの中で、生成AI利用環境である源内は、20種類以上の行政実務用AIアプリと約8割の効率化実感という具体的な成果を積み上げてきました。国内LLMの活用や商用利用可能なライセンスでのOSS公開も動き出し、行政の生産性向上、国産AIの育成、民間や地方自治体への波及という3つの意義が重なっています。私が注目しているのは、この取り組みが「AIを使った」という実績づくりで終わるのか、業務そのものを変える起点になるのか、という点です。

今後は、18万人規模の展開スケジュールと、CAIOやアドバイザリーボードを軸としたガバナンスがどう噛み合っていくかが焦点です。利用格差やハルシネーションといった課題の解き方も含めて、源内の歩みを追いかけていくと、行政と民間の双方でAIとの付き合い方が見えてきます。生成AIは、導入すること自体が目的ではありません。誰がどの業務でどう使い、何を人間が引き受けるかを決め続ける営みとして、源内の展開を見ていくことが重要だと考えています。

監修者

安達裕哉(あだち ゆうや)

デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、95万部(2026年6月時点)を売り上げる。
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参照

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