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この記事のまとめ
Google Picsの一般提供が始まり、Workspaceの中で画像の生成と精密な編集ができるようになりました。あわせてGeminiのエージェント型動画理解が加わり、動画分析にかかるコストとトークンを大きく減らせます。一方で、動画を一から作る生成側には、ショットをまたぐ一貫性の課題が残っています。
- Google Picsは、Google AI ProとUltraの個人プラン、WorkspaceのBusiness Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plusの各プラン、Google AI Pro for Educationで使えます。
- エージェント型動画理解を備えたGeminiモデルは、標準的な動画分析ベンチマークで精度を最大7%高め、分析コストを最大66%、トークン消費量を最大88%減らします。
- 5分未満の短いクリップや、フレーム単位の精度が要る場面では静的処理が向いています。
- 動画生成では、ショット間の安定性と一貫性に苦戦するという指摘が研究から出ています。
Agentic Videoの仕組み

静的処理とエージェント型の違い
静的処理とエージェント型の違いは、動画のどこを、どうやって読み込むかにあります。一言で言えば、「全部均等に見る」か「必要なところだけ賢く見に行く」かの違いです。
まず、既定の静的処理は動画を一定の間隔で取り込みます。Gemini APIの動画理解ドキュメントによると、動画入力は既定で静的処理を使い、1秒あたり1フレームを抽出します(参照*1)。
Googleの発表では、この固定のフレームレートは既定が1FPSで、APIで調整できるとしています(参照*2)。
一方のエージェント型動画理解では、モデルが動画の中を動き回ります。同じ動画理解ドキュメントは、モデルが動画のタイムラインを動的に探索し、プロンプトに基づいてトランスクリプトを選んで調べ、フレームレートと解像度を適応的に調整する機能だと説明します(参照*1)。
Googleの発表によると、この方式はモデルの中核的な推論とネイティブの動画ツールを組み合わせ、映像フレーム、音声、文字起こしを横断して、対象となる動画セグメントを動的に検索、スキャン、検査します(参照*2)。
Gemini Enterprise Agent Platformのドキュメントも、すべてのフレームを静的に処理するのではなく、動画コンテンツ内を動的に移動できると記しています(参照*3)。
コスト66%削減とトークン88%削減
どれだけ削減されるのかは、Googleがベンチマークでの数値として公開しています。コスト66%削減、トークン88%削減という数字は、実務で使う立場から見てもインパクトが大きいと感じます。
効率と精度の両方に変化があります。Googleの発表によると、標準的な動画分析ベンチマーク全体で、エージェント型動画理解を備えたGeminiモデルは精度を最大7%向上させます。同時に、分析コストを最大66%、トークン消費量を最大88%削減します。
いずれも最大値として示された数字です。同社は、これらの効率向上が、10分間のハウツーガイドから90分間の講義、数時間にわたる録画まで、長時間の動画で特に顕著だとしています(参照*2)。
私が生成AIを業務で使い続ける中で感じてきたのは、「トークンを消費するほど費用がかさむ」という現実です。特に動画のような大容量データを扱う場合、静的処理で1秒あたり1フレームを均一に抜き出すやり方は、長時間になるほど不要なトークンを大量に消費します。エージェント型が「必要な部分だけ精査する」設計になっているなら、長尺動画での削減幅が特に大きいという説明は腑に落ちます。
長い動画での削減幅は、別のドキュメントでも説明されています。Gemini APIの最適化に関するドキュメントによると、長時間の動画コンテンツでは、エージェント型処理により応答品質を高めながら入力トークンコストを最大88%削減できます。その仕組みとして、静的処理のように1秒あたり1フレームを抽出する代わりに、モデルが動画内を動的に検索し、プロンプトに関連するトランスクリプト、フレーム、音声を読み込む点を挙げています(参照*4)。
対応モデルと利用できる環境
対応モデルと使える場所は、資料ごとに書き方が少し異なります。
挙げられているモデルを整理します。Gemini APIの動画理解ドキュメントは、Gemini 3.8 Flash、3.7 Flash、3.6 Flash、3.5 Flash Liteがエージェント型動画理解に対応すると記しています(参照*1)。
Googleの発表は、Gemini 3.7 Flash、3.6 Flash、3.5 Flash-Liteへこの機能を導入し、動画分析のトークン使用量とコストを大きく減らしながら精度を高めるとしました(参照*2)。
利用できる環境と指定方法も決まっています。発表によると、この機能はGoogle AI StudioとGemini Enterprise Agent PlatformのGemini APIを通じて、アップロードした動画とYouTube動画で使えます(参照*2)。
最適化ドキュメントは、Gemini 3.7 Flash、3.6 Flash、3.5 Flash Liteでエージェント型処理を使う場合、動画入力にInteractions APIならprocessing: "agentic"、GenerateContent APIならmedia_processing: "AGENTIC"を設定すると説明します。モデルがエージェント型処理に対応していないときは、エラーが返ります(参照*4)。
研究が示す能動的観察の効果と限界
必要な区間だけを能動的に見るという発想は、生成AI活用の文脈で言えば「候補を絞ってから処理する」設計に近いものです。研究の側からも、この方向性の効果と限界が報告されています。
まず効果の報告です。LensWalkの論文によると、この手法はモデルの微調整を必要とせず、複数のモデル構成でプラグアンドプレイの性能向上を実現します。
LVBenchやVideo-MMEのような難しい長時間動画ベンチマークでは、精度を5%以上向上させたと報告しています(参照*5)。この数字は、その論文が使ったベンチマークと構成での結果です。
課題の指摘もあります。別の論文は、現在の視覚言語モデルが数時間に及ぶ動画に苦戦すると述べています。理由として、全長の映像シーケンスを処理すると、極端なトークンの増加と注意の希薄化が起きる点を挙げています(参照*6)。
さらに別の論文の実験結果は、評価したOLMが時間的な位置特定や長距離の因果推論といったタスクで、依然として課題に直面していることを示しました(参照*7)。
処理モードの使い分け

長尺動画でエージェント型が向く場面
エージェント型が生きるのは、長い動画や特定の場面を探すような質問です。裏を返せば、短い動画を素早く処理したい場面では向かないこともあります。
公式ドキュメントは、向いている使い方を具体的に挙げています。Gemini Enterprise Agent Platformのドキュメントによると、長時間動画のQ&Aでは、1時間の講義や会議、動画チュートリアルについて質問できます。
また、1つのリクエストで複数の動画を比べられ、同じリクエスト内の各動画に異なる処理モードを使えます。動画ワークロードのコスト最適化では、動画を多用するアプリケーションでのトークン消費を大幅に減らします(参照*3)。
クエリの性質から見た目安もあります。Gemini APIの動画理解ドキュメントによると、エージェント型は長時間動画や、特定の瞬間を対象とするクエリに適しています。モデルはコンテキストウィンドウを埋めることなく、文脈上関連する情報を対象にタイムラインを動的に移動します(参照*1)。
短尺クリップと運用上の注意点
短いクリップに対するレイテンシー重視のクエリや、細かい精度が要る場面では、静的処理のほうが合います。
静的処理が向く条件は明確です。Gemini APIの動画理解ドキュメントは、静的処理が5分未満の短いクリップに対するレイテンシー重視のクエリや、クリップ全体でフレームレベルの精度が必要な場合に適するとしています(参照*1)。
最適化ドキュメントによると、レイテンシが重要な5分未満の短いクリップでは、生成開始前にエージェント型モードで内部推論とツールの往復が発生するため、静的処理のほうが最初のトークンまでの時間、つまりTTFTが速くなる場合があります(参照*4)。
運用面では、会話の続きと設定の自由度に条件が付きます。Gemini Enterprise Agent Platformのドキュメントによると、会話のターン間で動画のコンテキストを保持する必要があります。GenerateContent APIでエージェント型処理を使うと、動画のコンテキストをエンコードする不透明なステップ、step_listが応答に含まれる場合があり、コンテキストを保つには次のターンにこれらのステップを含める必要があります(参照*3)。
動画理解ドキュメントは、クリッピング間隔の設定やカスタムフレームレートサンプリングの指定について、動画を静的モードで処理する場合にのみサポートされると記しています(参照*1)。
Google Picsの一般提供

提供対象プランと精密編集機能
Google Picsは一般提供が始まり、対象プランと編集機能がはっきりしました。
まず使えるプランです。9to5Googleの記事によると、Google Picsは提供開始の日から、Google AI ProとUltraの個人プラン、WorkspaceのBusiness Standard、Business Plus、Enterprise Standard、Enterprise Plusの各プラン、そしてGoogle AI Pro for Educationで利用できます(参照*8)。
編集機能は、画像の一部を狙って直せる作りです。Workspaceの更新情報によると、特定の要素にカーソルを合わせて選び、正確な部分編集ができます。個別のテキスト要素を編集したり、書式を整え直したり、翻訳したりもできます。
画像はWeb、ソーシャルメディア、印刷、デジタル向けにトリミングでき、2Kまたは4Kへアップスケールできます。ただし生成AI機能の利用には制限があり、少なくとも2027年2月28日まではより多く使えて、その後はアクセスが制限される可能性があります(参照*9)。
基盤となるモデルも公開されています。Googleの発表は、PicsがNano Banana画像生成・編集モデルを基盤とし、ポスターのデザイン、ソーシャルメディアへの投稿の制作、デジタルイラストの編集など、思い描いたものを作るために必要なコントロールを提供するとしました(参照*10)。
Workspace統合と共同編集
Picsは単体のツールとしてだけでなく、Workspaceのアプリの中からも呼び出せます。
呼び出しはワンクリックで完結します。Workspaceの更新情報によると、Google DocsまたはSlidesで画像を選んでワンクリックすれば、アプリやタブを切り替えずにPicsの精密AIツール一式で編集できます(参照*9)。
共有と共同編集、そして保存場所との連携も用意されています。同じ更新情報によると、チームメンバーを招いて共同作業ができ、リンクで画像を共有でき、Google DriveでPics画像を作成したり開いたりできます。さらに今後数週間以内に、Driveに保存したほぼすべての画像を、ワンクリックでPicsで開いて編集できるようになるとしています(参照*9)。
Googleの発表も、この統合がDocsとSlidesから始まり、今後数週間でDriveにも展開されると説明しました(参照*10)。
Vidsと制作フローの変化

Vidsを組み込んだ制作事例
Google Vidsは、台本を入れて動画を作る工程として、実際の業務フローに組み込まれています。私自身、会議の議事録や要約をGeminiで作らせる運用を試していますが、そこからさらに動画スクリプトへ変換するフローは、資料作成の延長として現実的な選択肢に見えます。
まずPicsとの関係です。9to5Googleの記事によると、Google PicsはGoogle Vidsに続く製品で、Google Workspaceにネイティブに組み込まれています。DocsやSlidesの画像をクリックすると、オーバーレイとしてPicsのエディタが開き、その場で編集を始められます(参照*8)。
Vidsを使う制作フローの例もあります。Fullstoryは、ブランドが顧客とのやり取りを理解できるよう支援する行動データプラットフォームです。
同社はGeminiで会議のメモを取り、構造化された形式に要約し、30秒の動画スクリプトに変換します。チームはそのスクリプトをGoogle Vidsに入力し、顧客、見込み客、コールドアウトリーチ、イベントプロモーション向けに、ナレーションと画像を備えた動画を作成しています(参照*11)。
「直す・切り出す」中心の運用
長い映像から必要な部分を取り出す運用は、公開された事例として報告されています。
出版の現場では、動画から記事を作る時間が変わりました。Mediology Softwareは、インド全土の出版社にサービスを提供するデジタル出版代理店です。
同社はVertex AIとGeminiをSORTD製品群に統合し、動画分析、コンテンツ要約、画像生成、メタデータ拡充といったAI活用のコンテンツ運用を行っています。1時間の動画からニュース記事を作成する平均時間は、最長3日からわずか3時間に短縮したと報告しています(参照*11)。3日が3時間になるというのは、単なる効率化ではなく、報道の速度という観点で質的な変化に近いと感じます。
映像の確認作業も、通し見から検索へ変わった例があります。Moii.AIは、CCTVカメラを自律的な安全・生産性エージェントに変えるソフトウェアスタートアップです。
同社はGeminiモデル、Vertex AI、BigQueryを使って動画映像を分析し、職場の危険をリアルタイムで検出しています。以前は5人が2〜3日かけて手作業で映像を確認していましたが、現在は5分間の検索で済むとしています(参照*11)。
切り出し方の用途例も整理されています。Amazon Bedrockのマルチモーダルモデルに関する解説は、メディア制作の用途として、チャプターマーカーとシーンの説明のために映像を分析することを挙げています。あわせて、動画ライブラリに自動でタグを付けて整理するコンテンツカタログ化と、長時間コンテンツの重要な瞬間を特定するハイライト生成も示しています(参照*12)。
動画生成に残る一貫性の課題

マルチショットの一貫性の限界
動画を一から作る側では、ショットをまたいだときの安定性が課題として指摘されています。「分析・理解」と「生成」では、AIの得意不得意がまだ大きく異なるという点は、実務で使い分けを判断するうえで重要です。
マルチショットを評価した研究の指摘です。この研究によると、現在のシステムは高いプロンプト整合能力を備えているにもかかわらず、ショット間の長編動画の安定性と一貫性に苦戦しています。
そのため、真の世界モデルというよりも、視覚的な補間器として機能していると述べています(参照*13)。この評価は、その研究が対象とした生成手法の範囲での結果です。
別の研究も、似た方向の課題を報告しています。推論集約型のタスクでは、現在の動画モデルが長期的な時間的一貫性、物理的・空間的一貫性、論理的連続性に依然として苦戦しているとしています。そのうえで、高い視覚的リアリズムは信頼できる推論を保証しないと結論づけました(参照*14)。
物理的リアリズムと評価の難しさ
見た目の進歩と、物理的にもっともらしいかどうかは別の話になります。これは動画に限らず、生成AIの出力全般に言えることです。文章がうまく見えるほど内容も正しいと錯覚されやすいように、動画のリアリズムが高まるほど物理的な妥当性も担保されていると思われがちです。しかし実際には、そうではありません。
この点は、物理的リアリズムを扱った研究が具体的に説明しています。同研究によると、動画生成モデルは、モーションの連続性、カメラの動き、プロンプトへの忠実度が向上した動画を生成するうえで著しい進歩を示しています。
しかし、これらの進歩が、知覚される物理的リアリズムの向上に確実につながるわけではないとしています。生成された動画には、依然として不自然な接触、誤った力への反応、基本的な物理的制約への違反が見られると指摘しました(参照*15)。
測る物差しの側も、まだ整っていません。同じ研究は、生成動画の物理的リアリズムを測定する信頼できる指標が不足していると認識しています。その差を埋めるため、さまざまな指標やベンチマークを提案する研究が現れているとも述べています(参照*15)。
おわりに
編集と理解の側は、すでに手を動かせる段階にあります。Google Picsは一般提供が始まり、DocsやSlidesの画像をその場で直せます。Geminiのエージェント型動画理解は、コストとトークンの削減が長時間動画で特に顕著だと報告されています。私が生成AI導入の現場で繰り返し伝えてきたことの一つは、「まず使える部分から使い始める」ということです。全社展開を構想するより先に、手元の業務のどこに当てはめると時間が浮くかを具体的に見つけることが重要です。
一方、動画を一から作る側には、ショット間の一貫性や物理的な妥当性という課題が研究から示されています。使い分けの目安は、動画の長さと、フレーム単位の精度が要るかどうかです。生成AI機能の利用条件や対応モデルの範囲も、資料ごとに書き方が異なる点は確認しておく必要があります。「できる」と「実務で使える」の間には、まだ距離がある領域も残っています。その距離を見極めながら使うことが、現時点での正しい向き合い方だと考えます。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、95万部(2026年6月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) Google AI for Developers – Video understanding
- (*2) Google – Introducing Agentic Video in Gemini
- (*3) Google Cloud Documentation – Video understanding
- (*4) Google AI for Developers – Gemini API optimization and inference
- (*5) LensWalk: Agentic Video Understanding by Planning How You See in Videos
- (*6) MemDreamer: Decoupling Perception and Reasoning for Long Video Understanding via Hierarchical Graph Memory and Agentic Retrieval Mechanism
- (*7) https://aclanthology.org/2026.findings-acl.965.pdf
- (*8) 9to5Google – Google Pics is Workspace’s new ‘pro-level’ AI image creator, editor
- (*9) Workspace Updates Blog – Google Pics brings pro-level AI image creation and editing to Google Workspace
- (*10) Google – Google AI Pro, Ultra subscribers: Try Google Pics
- (*11) Google Cloud Blog – Real-world gen AI use cases from the world's leading organizations
- (*12) Amazon Web Services – Unlocking video insights at scale with Amazon Bedrock multimodal models
- (*13) MSVBench: Towards Human-Level Evaluation of Multi-Shot Video Generation
- (*14) OpenCoF: Learning to Reason Through Video Generation
- (*15) Physion-Eval: Evaluating Physical Realism in Generated Video via Human Reasoning