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この記事のまとめ
生成AIのフロンティアモデルは、コード生成や長時間タスク、知識ワークで得意分野が分かれています。この記事では、公開されている最新のベンチマーク結果をもとに、GPT-5.6、Grok 4.5、Claude Fable 5の実力を数値で見比べます。読み終えると、自分の用途に合ったモデルの選び方が見えてきます。
- Coding Agent Indexの首位はGPT-5.6 Sol(max)で80点、Composer 2.5は62点で3位
- Claude Fable 5(max)はAA-Briefcaseで首位、知識ワークに強み
- Grok 4.5は入力2ドル/百万トークンなど価格面で比較しやすい
- 長時間タスクは最強モデルでも解決率が4割前後にとどまる
フロンティアモデルの定義と比較の前提

生成AIとフロンティアモデルの違い
まずは言葉の整理が必要です。生成AIとフロンティアモデルは近い場所で語られますが、指している範囲が違います。私はモデルを実際に使い比べる立場として、この区別を意識しないと比較の前提がずれると感じています。
国際的な安全性レポートでは、生成AIを「既存データからパターンを学び、テキスト・画像・音声などの新しい成果物を作るAI」と定義しています。また汎用AI(General-purpose AI)は「一つの用途に特化せず、さまざまなタスクをこなせるモデルやシステム」と説明されています。ベンチマークは「AIの性能を比較するために、決まったタスク集合で測る標準化された定量テスト」と位置づけられています(参照*1)。
この整理を踏まえると、フロンティアモデルは生成AIのうち、汎用性と最先端性能を兼ね備えたモデルを指す言葉として使われます。比較する側は、どの物差し(ベンチマーク)で測るのかを最初に決めておく必要があります。
比較を難しくする3つの要素
フロンティアモデルの比較は、単純な順位表だけでは見えにくい面があります。
コーディングエージェント評価の方法論では、リポジトリのQ&A、実装やバグ修正、ターミナル操作中心のワークフローで、同じエージェントでも成績が大きく変わると説明されています。総合指数は複数のベンチマーク群を一つの上位ビューにまとめる一方で、下位のベンチマーク別の内訳も残す設計になっています(参照*2)。SWE Atlasの論文では、これまでのSWE系ベンチマークとの違いとして、実務で重要だが評価が薄かったタスク領域を対象にすること、カテゴリごとの評価手順を持つこと、実際の使い方に近い曖昧なタスク指示を採ることを挙げています(参照*3)。
つまり、どのベンチマークで何を測ったのかを確認しないと、生成AIやフロンティアモデルの比較は簡単に食い違います。私自身、複数のモデルに同じ課題を与えて検証する際、指数だけを見て判断すると印象が変わることを何度も経験しています。内訳のタスク種別まで意識することが実務ではポイントです。
主要フロンティアモデルの全体像

GPT-5.6 Sol/Terra/Lunaの構成
GPT-5.6はSol、Terra、Lunaという3つのモデルで構成されます。
Artificial AnalysisのIntelligence Indexでは、GPT-5.6 Sol(max)が59点で、Claude Fable 5(max)より1点低い水準にあり、コストはおよそ3分の1と紹介されています。GPT-5.6 Terra(max)とLuna(max)はそれぞれ55点と51点で、Solと比べてタスクあたりコストは約50%と約80%低いとされています(参照*4)。ARC-AGIの結果では、GPT-5.6 Sol(max reasoning effort)がPublicで13.33%、Semi-Privateで7.78%を平均し、ARC-AGI-3のPublicゲーム(ft09)で87%を取り、公開ゲームで勝利した初のモデルとして紹介されています(参照*5)。
3モデルは知能・コスト・用途で階段状に並んでいます。高難度の推論はSol、コスト重視ならTerraやLunaと、役割分担ができる構成になっています。私が複数モデルを使い分ける際も、タスクの難易度に合わせてモデルを切り替えるのが現実的で、常に最上位モデルを使えばよいわけではないと考えています。
Grok 4.5とComposer系の位置づけ
Grok 4.5とComposer系は、コードエージェント市場の中で立ち位置が分かれます。
Grok 4.5はCursorとSpaceXAIが共同で開発したモデルで、ソフトウェアエンジニアリング以外にも、データサイエンス、金融、法務など、コンピュータ上のあらゆる作業向けに設計されたと説明されています。ツールを創造的に使って長時間タスクを解ける、専門家混合(Mixture-of-Experts)のモデルとして紹介されています(参照*6)。Composer 2.5はArtificial AnalysisのCoding Agent Indexで62点を獲得し、Claude Opus 4.7(max)の66点、GPT-5.5(xhigh reasoning)の65点に次ぐ3位で、上位モデルよりタスクあたり10〜60倍安いとされています(参照*7)。
Grok 4.5は幅広い知的作業の主戦力、Composer 2.5はコーディング特化のコスト効率枠と読み解けます。同じ提供元でも狙う用途が異なるモデルが並存している点は押さえておきたいところです。私がモデルを評価する際も、ブランド名よりも「自分の業務課題に対してどの程度使えるか」を先に確認します。
Claude Fable 5の特徴
Claude Fable 5は、知能指数と知識ワーク系ベンチで存在感を示すモデルです。
Artificial AnalysisのIntelligence Indexでは、Claude Fable 5(max)がGPT-5.6 Sol(max)より1点高い水準にあり、比較対象の基準として繰り返し登場します(参照*4)。SWE Atlasの評価では、フロンティアモデルとオープンウェイトモデルを比較した結果、GPT-5.4とOpus 4.7が総合で最も強く、上位モデルは広範なコードベース探索と実行時の推論を活用していると分析されています。一方で、微妙なエッジケースや複雑な実行時解析、ソフトウェア工学のベストプラクティス遵守では、上位モデルでも安定して苦戦していると報告されています(参照*3)。
高精度が必要な知識ワークで比較されやすい一方、コードの細部では上位モデル全体に共通の課題が残ることも分かります。性能の宣伝文句より、こうした弱点の共通性を把握しておくほうが、実務での期待値設定には役立ちます。
ベンチマーク別の実測スコア比較

Coding Agent Indexの総合順位
Coding Agent Indexは、コード系ベンチマークを一つの物差しに束ねた指標です。
Artificial Analysisの評価では、CodexのGPT-5.6 Sol(max)がインデックスで80点を取り、3つの評価すべてで首位でした(SWE-Atlas-QnAではGrok BuildのGrok 4.5と同点)。Claude Fable 5(max)よりタスクあたり約40%安く、Opus 4.8(max)より約10%安いと紹介されています。GPT-5.6 Terra(max)とLuna(max)はそれぞれ77点と75点で、Solに対してタスクあたりコストは約60%と約80%低いと報告されています(参照*4)。同じ指数の別記事では、Composer 2.5が62点で3位につけ、Claude Opus 4.7(max)の66点、GPT-5.5(xhigh reasoning)の65点に続くと紹介されています(参照*7)。
上位はGPT-5.6系とClaude系が拮抗し、その一段下にComposer 2.5が食い込む構図です。単に順位を見るのではなく、点差とコスト差を合わせて見ると選択肢が絞りやすくなります。私が検証する際も、最高スコアのモデルではなく「このコスト差を払う価値があるか」を先に問うようにしています。
SWE-Atlas-QnAでの深い理解力
SWE-Atlas-QnAは、コード理解の深さを問うベンチマークです。
データセットの説明では、Codebase QnAはSWE-Atlasスイート最初のベンチマークで、実行経路の追跡、アーキテクチャ判断の説明、プロダクション級ソフトウェアに関する深い技術質問への回答を通じ、AIエージェントの深いコード理解を評価すると位置づけられています。Go、Python、C、TypeScriptにまたがる11のオープンソースリポジトリで124タスクを用意し、評価は大規模言語モデル(LLM)審査員(Claude Opus 4.5)がルーブリック基準ごとに独立採点します(参照*8)。GPT-5.6の記事では、CodexのGPT-5.6 Sol(max)がSWE-Atlas-QnAでGrok BuildのGrok 4.5と同点でトップに並んだと紹介されています(参照*4)。
このベンチマークの高得点は、大規模コードベースを読み解く能力の裏付けになります。既存プロジェクトの調査や保守を任せたい場合に、注目しやすいスコアです。
Terminal-Bench v2とDeepSWEの結果
Coding Agent Indexは、1つのベンチマークだけでできているわけではありません。
方法論のページでは、公開版インデックスに含まれるベンチマーク構成として、長時間ソフトウェア開発を測るDeepSWEが113タスク、ターミナルを使うエージェント作業を測るTerminal-Bench v2が84タスク、リポジトリQ&AのSWE-Atlas-QnAが124タスクで、合計321タスクを評価対象にしていると説明されています(参照*2)。GPT-5.6の記事では、CodexのGPT-5.6 Sol(max)がこの3つの評価すべてで首位だったと紹介されています(参照*4)。
3種類のタスクで満遍なく強いモデルは限られます。用途がターミナル寄りか長時間開発寄りかで、見るべきベンチマーク内訳も変えたほうが安全です。
コストとトークン効率の比較

タスク単価とキャッシュ課金モデル
フロンティアモデルの費用は、単価と課金体系の両方を見る必要があります。
Grok 4.5のベースモデルは入力2ドル/百万トークン、出力6ドル/百万トークン、ファスト版は入力4ドル、出力18ドルと案内されています(参照*6)。GPT-5.6ではキャッシュ書き込み課金がOpenAIとして初導入され、Sol、Terra、Lunaの入力/出力価格は百万トークンあたり5ドル/30ドル、2.5ドル/15ドル、1ドル/6ドルです。キャッシュ読み出しは従来通り90%割引を維持し、キャッシュ書き込みは入力トークンの1.25倍と紹介されています(参照*4)。GPT-5.6 Terraの開発者向けドキュメントでは、入力トークンが272Kを超えるプロンプトはリクエスト全体で入力2倍、出力1.5倍の課金となり、キャッシュ書き込みは非キャッシュ入力レートの1.25倍で請求されると明記されています(参照*9)。
単価だけでなく、キャッシュや長入力の割増を含めて見積もると印象が変わります。実運用では入力量と再利用率を洗い出し、実質単価で比較することが有効です。コスト感覚は料金表を眺めるだけでは身につかず、実際のタスクで計測して初めて分かる部分が大きいと感じています。
トークン消費の変動と読めなさ
エージェント運用では、料金表通りにコストが収まらないことがあります。
エージェント型タスクを分析した論文では、エージェントタスクはコード推論やコードチャットと比べて1000倍のトークンを消費し、コストを押し上げるのは出力より入力トークンだと報告されています。トークン使用量は変動が大きく本質的に確率的で、同じタスクを回しても総トークンが最大30倍違うことがあり、トークンを多く使っても精度が上がるとは限らないと指摘されています。同じタスクでKimi-K2やClaude-Sonnet-4.5は、GPT-5より平均で150万トークン以上多く消費すると分析されています(参照*10)。
生成AIのコスト比較は「1タスクいくら」だけでは判断できません。使うモデルごとの消費量の癖と、実タスクでのばらつきを合わせて見ると、予算の見通しが立てやすくなります。私が企業への導入支援をする場面でも、トークン消費のばらつきを事前に伝えておかないと、想定外のコストに驚かれるケースが少なくありません。
長時間タスクとエージェント運用の実力差

長期改修タスクでの解決率
長時間の改修タスクは、フロンティアモデルでも簡単には解けません。
RoadmapBenchの論文では、5つのプログラミング言語と17リポジトリにわたる、実際のオープンソースのバージョンアップに基づく115の長期コーディングタスクを用意したと説明されています。各タスクはソース版のコードスナップショットに置かれ、目標版で導入された機能を実装するよう複数目標のロードマップ指示を与え、修正規模の中央値は51ファイルにわたる3,700行でした。13のフロンティアモデルを体系評価した結果、最強のClaude-Opus-4.7でも解決率は39.1%、最弱では5.2%にとどまったと報告されています(参照*11)。
ツール利用の壁も残ります。MCP Atlasのリーダーボードでは、Claude Opus 4.5がパス率62.3%、平均カバレッジ78.5%と紹介され、失敗要因は誤ったツール選択やパラメータ、スキーマ違反、順序ミスなどのツール利用系が47.5〜68.5%、早期停止やサブゴール見落としなどのタスク理解系が22.5〜36.0%を占めています(参照*12)。
反復拡張で起きるコード劣化
エージェントに自分のコードを繰り返し拡張させると、質は落ちていきます。
SlopCodeBenchの論文では、36問題と196チェックポイントで、エージェントが自分の解を反復拡張する挙動を評価したと説明されています。オープンとクローズドの15のコーディングエージェントを評価した結果、どのエージェントも問題を最後まで完全に解けず、最良でもチェックポイント通過率は14.8%でした。品質はチェックポイントごとに劣化し、構造の崩れは軌跡の77%で、冗長化は75.5%で増加しました。オープンソースPythonリポジトリ473件と比べると、エージェントのコードは2.3倍冗長で、2.0倍崩れていたと報告されています(参照*13)。
長く走らせるほど成果物が育つとは限らないという事実は、運用設計にそのまま関わります。私は生成AIの業務活用において、エージェントを長時間回しっぱなしにするより、人によるチェックポイントの設置と途中でのリセット判断を前提に組むことが現実的だと考えています。AIの自律性に過度な期待を持たないことが、現場定着の条件のひとつです。
用途別の選び方と注意点

コード生成・並列エージェント向け
コーディングと並列エージェント運用では、指数の順位とタスク単価を並べて見るのが近道です。
Coding Agent Indexでは、CodexのGPT-5.6 Sol(max)が80点で首位、Terra(max)とLuna(max)がそれぞれ77点と75点で、Solよりタスク単価が約60%と約80%低いと紹介されています(参照*4)。Composer 2.5は同指数で62点の3位で、上位モデルよりタスク単価が10〜60倍安いと報告されています(参照*7)。
精度最優先ならSol、量をさばくならTerra・Luna・Composer 2.5と分けると整理できます。並列で走らせる場合は、タスクあたり単価と消費トークンの読めなさを合わせて見ることがポイントです。私が実際に複数モデルを並列で試した際も、コスト総量は事前予測より振れが大きく、余裕を持った見積もりが必要だと感じました。
知識ワーク・安全性重視向け
知識ワークと安全性を重視する場合、選択肢は少し変わります。
AA-BriefcaseはArtificial Analysisが業界専門家と作った、複雑プロジェクトの現実的な知識ワークを測るベンチマークで、GPT-5.6 Sol(max)はClaude Fable 5(max)に次ぐ2位で、Presentation Eloは全モデル中最高と紹介されています。Fable 5(max)はルーブリック評価(Rubric Score)が56%で、GPT-5.6 Sol(max)の42%を上回ることが首位の主因と説明されています(参照*4)。Grok 4.5は、以前のモデルであるComposer 2.5をコーディング特化で訓練したのに対し、高品質STEMタスクや研究論文、その他の知識ワークまで含めた広い訓練データで幅広い領域の熟達を狙い、サイバーセキュリティ能力に対応する新しいセーフガードを追加したと説明されています(参照*6)。
評価精度を重視するならFable 5、幅広い知的作業を1モデルで回すならGrok 4.5、両方のバランスをとるならGPT-5.6 Solという整理がしやすくなります。ただし、どのモデルが自分の業務に合うかは、宣伝文句ではなく手元のタスクで実力を確かめることが最終的な答えになります。
おわりに
生成AIのフロンティアモデルは、Coding Agent Indexでの順位、SWE-Atlas-QnAでの深い理解、AA-Briefcaseの知識ワーク評価など、複数のベンチマークで得意分野が分かれていました。GPT-5.6 Sol・Terra・Luna、Grok 4.5とComposer 2.5、Claude Fable 5は、それぞれ狙う用途とコストの位置取りが異なります。私がモデルを比較する際に感じるのは、どれが「最強か」を問うより「何に使うか」を先に決めたほうが結論が早いということです。
比較を実務で使うときは、指数の点差、タスク単価、キャッシュや長入力の課金、トークン消費のばらつき、長時間タスクでの解決率の低さまで含めて確認することがポイントです。新モデルが出るたびに宣伝文句に飛びつくのではなく、手元のタスクで実力を確かめる習慣を持つことが、フロンティアモデルと付き合ううえで一番重要だと考えています。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) International AI Safety Report – International AI Safety Report 2026
- (*2) Coding Agent Index Methodology
- (*3) Scale Labs – SWE Atlas: Benchmarking Coding Agents Beyond Issue Resolution
- (*4) GPT-5.6 benchmarks across Intelligence, Speed and Cost
- (*5) ARC Prize – GPT-5.6 Sol – ARC-AGI Results
- (*6) Cursor – Introducing Grok 4.5
- (*7) Cursor’s Composer 2.5: third on the Coding Agent Index and ~10-60x lower cost than rivals
- (*8) README.md · ScaleAI/SWE-Atlas-QnA at main
- (*9) GPT-5.6 Terra Model | OpenAI API
- (*10) arXiv.org – [2604.22750] How Do AI Agents Spend Your Money? Analyzing and Predicting Token Consumption in Agentic Coding Tasks
- (*11) arXiv.org – Evaluating Long-Horizon Agentic Software Development Across Version Upgrades
- (*12) Scale Labs Leaderboards – Scale Labs Leaderboard: MCP Atlas
- (*13) arXiv.org – Benchmarking How Coding Agents Degrade Over Long-Horizon Iterative Tasks