生成AI・コードとは何か?基本概念と活用の第一歩
生成AIとは、従来のプログラムが決められたルールに基づいて動作するのではなく、大量のデータを学習し、人間のような創造力で自動的にアイデアや文章、プログラムコードを生み出すAI技術です。コードとは、コンピュータに命令を与えるためのプログラミング言語の文法や構文を指します。従来は専門知識を持つエンジニアが手入力でコードを記述していたため、開発工数が膨大になりがちでした。しかし、生成AI技術の進歩により、コード生成や自動コード生成が可能となり、プログラマ以外の方でも新たなサービスやアプリケーションの構築を検討できる時代になりつつあります。
企業のDX推進担当者やAI導入担当者にとって、自動コード生成やAIコード生成の恩恵は非常に大きいです。複雑なアルゴリズムを一から構築する必要が減り、コード最適化やコード解析にかかる時間を短縮できるため、業務効率を飛躍的に高める可能性を秘めています。一方で、セキュリティやソースコードの品質をどのように担保するかといった不安も生まれます。生成AI技術やコード自動化を正しく理解し、運用ルールや学習データの管理を徹底することが重要です。
最初の一歩は小さくても構いません。まずはご自身や社内で興味のある部門から、生成AI導入のメリットとリスクを洗い出し、AI導入支援など外部パートナーの協力も得ながら小規模のPoC(概念実証)を進めてみるのがおすすめです。使い始めることで具体的な活用イメージが湧き、より大規模な展開に踏み切りやすくなります。
進む教育現場のAI化とノーコード動向
生成AIとコード自動化の波は、ビジネスの現場に限らず教育領域でも大きく進んでいます。特定非営利活動法人みんなのコードは、株式会社セールスフォース・ジャパンと連携し、小中高の児童・生徒に生成AIを安全に学んでもらうための「みんなで生成AIコース」を無償提供しています(参考)(参考)。このコースは、生成AIを安全かつ安心して利用できる環境を提供し、児童・生徒が生成AIの特性を理解しながら自由な発想を広げることを目的としています。先生が利用時間の設定や対話ログの確認など安全管理を行える機能も備えています。
こうした取り組みが拡大する背景には、生成AIを使うために必ずしも専門的なコード記述能力を必要としないという事情があります。ノーコードツールの登場によって、プログラミング未経験の先生や生徒でも簡単なアプリケーション開発や自動処理を体験できるようになりました。例えば、神山まるごと高専とコードキャンプ株式会社が開催している中学生向けの体験プログラムでは、生成AIツールやノーコードプラットフォームを使って、未来の道具を想像しながらウェブサイトを制作する体験が提供されています(参考)。
さらに、学校向けに開発された生成AI教材「プログルラボ みんなで生成AIコース」ベータ版は、Microsoft Azure OpenAIのAPIを活用しながら、安全性やアクセス制限など学校現場のニーズに合わせた仕組みを提供しています(参考)。こうしたノーコードや低コードのアプローチが当たり前になれば、中長期的には企業にも高いリテラシーを持った人材が供給されることが期待されます。
企業のDX担当者やプロジェクトリーダーにとっても、教育現場の最新動向を知ることは大きな意味があります。若い世代が生成AIを活用するラインが確保されることで、今後の人材育成だけでなく、組織全体のAI学習カルチャーの醸成にプラスの効果が望めます。
実際の導入事例から見る生成AIプラットフォームの可能性
生成AIプラットフォームがビジネスの現場でどのような役割を果たせるのか、具体例を押さえておくとイメージしやすくなります。Allganize Japan株式会社の大規模言語モデル(LLM)プラットフォームは、ローコードやノーコードAIアプリ開発の市場で高いシェアを得ており、金融・製造・自治体など多岐にわたる業界でDXを推進するために利用されています(参考)。専門のプログラム知識を要せずとも、100以上の生成AIアプリやAIエージェントが構築できるのが強みです。
また、TIS株式会社と澪標アナリティクスが共同で提供する生成AIプラットフォームも業務効率化を大幅に支援しています(参考)。使用する企業は新規事業企画作成やExcelの自動処理、ドキュメントレビューなどの負荷が高い業務をAIエージェント化し、ノーコードツールを用いて独自の業務アプリまで作成できます。セキュリティ面でもOpenID Connect認証やアクセス制御を備えているため、情報保護が求められる大企業にも適した設計です。さらに、専任コンサルタントが導入支援を行う点が特徴ですが、あくまでも客観的な事実として、セキュリティや開発フローの整備が心配な組織にとってはメリットとなるでしょう。
他にも、NTTスマートコネクトの生成AIサービスではノーコードのワークフローオプションが追加され、各種業務を一つの流れにまとめて効率化できるようになりました(参考)。このように、法人向けの生成AIプラットフォームは多彩な機能や外部連携オプションを揃え、幅広いユーザー層に対応するよう進化を続けています。
コード最適化や自動コード生成がもたらす業務効率化
コード生成AIや自動コード生成ツールは、プログラミングの初心者から熟練エンジニアまで幅広く役立つ技術です。Kotozna株式会社が提供を開始したノーコードで高精度な生成AIチャットボット構築サービスは、多言語対応を含めた高精度な生成AIチャットボットをノーコードで構築できるサービスとして注目されています(参考)。月額料金が3万円からというコスト設定も企業にとって導入しやすく、ホームページやFAQの情報を書き込むだけで素早く独自のAIシステムを作れるのが特長です。こうしたツールによって開発スピードが上がり、コード解析やコード補完の作業が省力化される結果、コア業務に集中できるメリットがあります。
さらに、スーパーコンピュータ技術を念頭に置いた最先端の取り組みとして、高性能計算(HPC)向けの自動コード生成技術開発も進んでいます(参考)。GPUなどの高速演算環境や大規模言語モデル(LLM)を活用して、一部の命令を自動最適化したり、複数の演算精度を使い分けたりできるコードを半自動的に生成する取り組みです。混合精度演算や自動性能チューニングといった機能も一体化することで、計算負荷の高いシミュレーションや科学技術計算の領域においてもAIプログラミングの恩恵が期待されています。
こうした動向は、単にコード生成の効率化にとどまらず、組織の業務全体を見直すきっかけにもなるでしょう。リソースの再配分を進めることで、人材不足や長時間労働の解消策としても機能します。すでにAIコード自動化や生成AIツールを組み合わせて生産性を高める事例が増えており、ワークフロー全体を最適化していく流れが加速しています。
生成AIの正しい導入と今後のトレンド
最後に、生成AIとコード自動化のトレンドを活かすために考えるべきポイントを整理します。まず、導入のねらいを明確にし、PoCで終わらない定着化のシナリオを描くことが重要です。導入目的をはっきりさせることで、必要となるパートナー企業や社内のキーマン、セキュリティ要件などが明確になり、プロジェクトがスムーズに進みやすくなります。DXやAI関連のプロジェクトが途中で止まってしまう原因の一つは、ゴール設定や運用フローが曖昧なまま進めてしまうことにあります。
また、世の中の最新事例や学術研究の進展をキャッチアップする仕組みも欠かせません。ノーコードや生成AIをテーマとしたイベントが行われ、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させる事例や未来戦略が議論されています(参考)。こうしたイベントに参加したり、オンライン配信を視聴することで、自社での導入アイデアを得たり、疑問点を整理したりできるでしょう。
さらに、多くの企業が関心を寄せるテーマである「セキュリティとカスタマイズ性」についても、クラウドサービスとオンプレミスを適切に使い分けるアプローチが有効です。社内データを外部に出したくない場合はローカルで完結できる仕組みを優先するなど、事業や業務内容、組織規模に合わせた選択を行う必要があります。一部のプロジェクトでは、和製の大規模言語モデルを用いることで、データの扱いや日本語の精度を高める取り組みも見られます。こうした動きに対応できるパートナーやツールを探す際には、製品やサービスを比較検討し、信頼性やコスト面などを総合的に評価することがポイントです。
まとめると、生成AIやコード自動化は、企業規模を問わず大きな可能性を秘めています。教育現場からスタートして社会全体へと広がっているこの潮流に乗り遅れないためにも、実際の事例とノウハウを吸収しながら、自社のDX戦略に組み込むことが重要です。導入の成功は、単発の取り組みではなく、持続的な学習環境と組織改革によって成し遂げられます。この機会に、最新トレンドを自社の課題解決にどう活かすか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
出典
- https://code.or.jp/news/20240611/
- https://code.or.jp/news/20250213/
- https://kamiyama.ac.jp/news/20250522-01/
- https://code.or.jp/news/20231201/
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000030320.html
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000085.000034106.html
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001807.000011650.html
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000118.000023803.html
- https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000054943.html
- https://www.hpc.itc.nagoya-u.ac.jp/menu/hpc_genie.html
Photo:Chris Ried