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はじめに――なぜChatGPTの回数制限が問題になるのか
ChatGPTを日常的に活用していると、特定のタイミングでメッセージを送信できなくなる「回数制限」に直面することがあります。こうした制限は、業務効率化や生産性向上を目的にAIを積極的に利用したい企業や個人にとって、作業の中断や業務遅延の要因となり得ます。特に、DX推進や業務自動化を担う担当者にとっては、計画的な業務運用に支障をきたす場面も少なくありません。
回数制限が設けられている背景には、公正な利用の確保やサーバー負荷の制御、悪用防止といった運用上の必要性があります。しかし、利用者側からは「もっと自由に使いたい」「リセット時間や上限が気になる」といった声が多く聞かれます。本記事では、ChatGPTの回数制限の仕組みを整理し、具体的な対策や代替策、そして業務現場での実践的な活用ノウハウまでを詳しく解説します。
ChatGPTの回数制限の種類と仕組み

メッセージ回数制限の基本
ChatGPTの回数制限で最も基本となるのが「メッセージ回数」の上限です。これは、一定時間内に送信できるメッセージ数が制限される仕組みで、無料プランでは5時間あたり10〜20回程度が一般的な上限とされています。上限に達すると「制限に達しました」と表示され、一定時間が経過するまで送信ができなくなります(参照*1)。
有料のChatGPT Plusプランでは、3時間ごとに80件、場合によっては160件までメッセージを送信できるケースもあり、利用するモデルや時期によって上限が変動することが報告されています(参照*2)。
こうしたメッセージ制限は、OpenAIが全体のサーバー負荷を管理し、公平な利用環境を維持するために不可欠な施策です。特定の時間帯に一部ユーザーが大量のやり取りを行うと、全体のパフォーマンス低下につながるためです。また、無料プランから有料プランへの移行を促す意味合いも含まれています。利用者側としては、制限を意識しつつ、質問や指示をまとめて効率的にやり取りする工夫が求められます。
モデル別回数制限とトークン制限
ChatGPTの回数制限は、利用するモデルによっても異なります。たとえば、GPT-4やGPT-4oでは3時間あたり40〜80件、GPT-4.5では週あたり50件、o3-miniシリーズでは1日あたり150件など、モデルごとに上限が細かく設定されています(参照*3)。また、o3-mini-highは1日50件、GPT-4o miniは無制限とされる場合もあります。
さらに、トークン数(入力・出力の文字数や単語数に近い指標)を基準とした制限も重要です。OpenAIの公式資料では、分あたりのリクエスト数(RPM)、分あたりのトークン数(TPM)、1日あたりのトークン数(TPD)などが設定されており、いずれかの上限に達するとアクセスが制限されます(参照*4)。このため、メッセージ数が少なくても、1回のやり取りが長文や大量のデータを含む場合、早期に制限に到達することがあります。
Web版とAPIの回数制限の違い
WebブラウザでChatGPTを利用する場合、1アカウント・1セッションごとに回数制限が管理されます。複数タブを開いたり、短時間で大量のリクエストを送ると「Too many concurrent requests」「Limit reached」といったエラーが発生しやすくなります(参照*5)。
一方、API経由での利用では、組織単位でのリクエスト総数やトークン数、IPごとの制限など、より細かい管理が行われます。APIは業務システムと連携して大量のアクセスが発生しやすいため、開発者はレートリミット(429エラー)対策として指数バックオフの実装や、用途に応じたモデル選択が推奨されています(参照*4)。Web版とAPIでは回数制限の仕組みが異なるため、運用上のトラブルを防ぐには両者の違いを理解しておくことが重要です。
プラン別に見るChatGPTの回数制限──無料版・Plus・Business・Proの比較

無料版の回数制限とリセットタイミング
ChatGPTの無料版では、5時間あたり10メッセージが一般的な上限とされており、上限に達するとリセットまで送信ができなくなります(参照*6)。ただし、この上限は混雑時やモデルの種類によって変動することがあり、1日あたりの制限に切り替わる場合もあります。
リセットは主に時間経過によって行われ、メッセージ数が上限に達した後、一定時間が経過すると再び利用可能になります(参照*1)。画像生成機能(DALL-Eなど)も無料プランに含まれていますが、1日ごとに回数がリセットされるため、利用タイミングを分散させることで効率的に活用できます。特に画像生成は制限回数が少ないため、必要なタイミングを意識して使うことがポイントです。
Plus・Business・Pro有料プランの回数制限と緩和
有料プランのChatGPT Plus(月額20ドル)は、3時間ごとに最大80件、場合によっては160件までメッセージを送信できるとされています(参照*2)。この上限はモデルや利用状況によって変動しますが、無料版に比べて大幅に高い上限が設定されています。
さらに、Businessプラン(月額25〜30ドル/ユーザー)やProプラン(月額200ドル)では、実質的に「ほぼ無制限」に近い利用が可能とされ、組織単位でのワークスペース管理や高度な分析機能、カスタムGPTの作成など、業務用途に適した機能が強化されています(参照*7)。ただし、いずれのプランでも「公正利用」の観点から、極端な濫用や不正利用には制限がかかる場合があります。
画像生成・Deep Researchなど周辺機能の回数制限
ChatGPTはテキストだけでなく、画像生成やリサーチ機能などの周辺機能にも独自の回数制限があります。たとえば、DALL-Eによる画像生成は3時間あたり最大40プロンプト、1日あたり最大200画像などの制限が設けられています(参照*3)。無料プランでは1日4回程度や5時間ごと数回と、さらに厳しい制限となる場合があります。
また、「Deep Research Tool」では月10回のクエリ制限、「Projects」機能では合計2Mトークンまでなど、開発・研究用途での濫用を防ぐための上限が細かく設定されています。各機能ごとの制限を把握し、用途に応じて計画的に活用することが、業務効率化やクリエイティブなアウトプットの継続に役立ちます。
回数制限エラーの種類と原因を正しく理解する

usage limitエラーとrate limitエラーの違い
ChatGPT利用時に表示される「usage limit」と「rate limit」は、いずれも回数制限を超えた際に発生するエラーですが、意味合いが異なります。usage limitエラーは、アカウント単位のトークンやリクエスト数などの総使用量が上限に達した場合に発生し、OpenAIの月間上限やユーザーが設定した上限を超えると通知されます(参照*8)。
一方、rate limitエラーは短時間に集中的なリクエストが行われ、分単位や時間単位のリクエスト数が上限を超えた場合に発生します。特にAPIを同時に多く呼び出す場面で発生しやすく、usage limitが月単位や組織全体の設定と関連するのに対し、rate limitは瞬間的なアクセス集中やプログラム的な多重アクセスが原因となります(参照*4)。
「Too many concurrent requests」エラーの特徴
「Too many concurrent requests」エラーは、同時に処理中のリクエスト数が多すぎてサーバー負荷が高まった場合に発生します(参照*5)。ブラウザで複数タブを開いて連続投稿したり、API経由で並列処理を多用していると発生しやすい傾向があります。
対策としては、リクエストの間隔を空けて送信する、ログアウトやブラウザ再起動でセッションをリセットする、API利用時は指数バックオフを実装するなど、負荷を分散させる工夫が有効です。これにより、エラーの発生頻度を下げることができます。
組織の使用上限と予算設定のポイント
複数ユーザーが同じ組織アカウントを利用する場合、個人単位だけでなく組織全体の月間使用上限にも注意が必要です。OpenAIの管理画面から予算(budget)や使用上限(usage limit)を設定し、その範囲内で利用量をコントロールすることで、想定外の費用増加や回数制限による業務停止リスクを抑えられます(参照*8)。
ユーザーごとの利用実績を把握し、特定のメンバーが過剰にトークンを消費していないか監視することも重要です。組織全体が回数制限やコスト上限に達してしまうと、プロジェクトの進行に支障をきたすため、計画的な利用と予算管理が不可欠です。
回数制限にかからないための実践テクニック

プロンプト設計とリクエスト管理の工夫
回数制限の影響を最小限に抑えるには、1回ごとのやり取りを効率化することが有効です。複数の質問や指示を1つのプロンプトにまとめて送信し、一度にまとめて回答を得ることで、リクエスト回数を抑えられます。バッチ処理を活用すれば、細切れのメッセージではなく、まとまった指示でやり取りを進めることができます(参照*4)。
また、ChatGPTが応答に使うトークン数を節約するため、指示や質問を簡潔にまとめる、不要な長文を避ける、要約を活用するなどの工夫も効果的です。特に無料版や低価格プランでは、こうした調整によって制限にかかりにくくなります。
ピーク時間帯の回避と環境の見直し
アクセス集中のピーク時間帯(日本時間の夜間や昼休みなど)は、回数制限やエラーが発生しやすくなります。混雑を避けるには、深夜や早朝などアクセスが分散する時間帯に利用するのが効果的です(参照*9)。
また、複数タブでの連続利用やブラウザのキャッシュが原因でエラーが発生することもあるため、定期的なキャッシュクリアや再ログイン、ブラウザの変更などを試すと、一時的に制限がリセットされる場合があります(参照*2)。
無料版ユーザーができる現実的な対策
無料版を長期間活用したい場合、回数制限を回避する裏技を探すよりも、正攻法で制限枠内で使いこなす方が安全です。VPNや複数アカウントの利用による回避は、利用規約違反となりアカウント停止のリスクがあります(参照*1)。
そのため、混雑時間帯を避ける、質問や要望をまとめて送信する、他のAIツール(GeminiやCanva AIなど)と併用するなど、現実的な工夫を重ねることが推奨されます。用途に応じてツールを使い分けることで、ChatGPTの無料枠を有効に活用できます(参照*10)。
根本的な解決策――自社運用や他モデル活用という選択肢

オープンソースLLMのセルフホスティングによる回数制限の撤廃
ChatGPTの回数制限を根本的に解消したい場合、オープンソースの大規模言語モデル(LLM)を自社環境で運用する方法が有効です。たとえば、DeepSeek v3やGPT-OSSなどのモデルをNorthflankなどの推論基盤に導入すれば、利用回数の制限を受けずに使い放題に近い運用が可能となります(参照*6)。ただし、GPUリソースや運用コストは自己負担となるため、機能面の自由度と費用面のバランスを検討する必要があります。
自社運用のメリットは、データを社内にとどめて情報漏洩リスクを抑えられることや、APIの制限や混雑による待ち時間に左右されずに利用できることです(参照*7)。一方で、運用体制の構築やモデルのアップデート、セキュリティ管理など、一定の技術的ハードルがあります。導入前には十分な検証とコスト評価が必要です。
BentoやNorthflankなど推論基盤の活用
自社運用を実現するには、NorthflankやBento Inference Platformといった推論基盤サービスが役立ちます。Northflankでは、GPUリソースに応じてSmallからLargeまでのスケールを選択し、OpenAI互換のAPIエンドポイントとして運用できます(参照*6)。Bento Inference Platformも、既存のAPI呼び出しを維持しながら自社ホスト環境へ移行できる仕組みを提供しています(参照*7)。
導入手順は、まず利用するオープンソースLLMを選び、推論基盤のアカウント登録後、テンプレートからデプロイするだけと比較的シンプルです。必要なGPU数やメモリ量を見極めて、小規模から始めて徐々に拡張する方法がコスト効率の面でも現実的です。
ChatGPT以外のAIツールとの使い分け
回数制限から完全に解放されるにはコストや工数がかかりますが、ChatGPTと他のAIツールを併用することで、制限の負担を大幅に軽減できます。近年はAnthropicのClaudeやGoogleのGemini、QwenやMistralなどのオープンソース系モデルも活発に開発されています(参照*11)。用途に応じて複数モデルを使い分けることで、それぞれの強みを活かしつつ、1サービスあたりの回数制限リスクを分散できます。
特に画像生成やコード補完、文章校正など、特化型AIツールも多数登場しています。ChatGPTの性能にこだわらず、必要な機能だけを無料または低コストで利用できる場面も多いため、他AIへの理解を深めておくことも重要です。
おわりに――回数制限とうまく付き合うために
ChatGPTを快適に活用するには、回数制限の仕組みや各プランの特徴を正しく理解し、用途や業務に合わせて最適な使い方を選択することが重要です。無料版では利用時間帯やプロンプト設計を工夫し、有料版ではプラン内容を把握した上で必要に応じてアップグレードを検討しましょう。
また、オープンソースLLMの導入や他AIツールとの併用も視野に入れることで、より柔軟で効率的なAI活用が可能になります。最終的には、自社のニーズやコスト、セキュリティ要件を見極めながら、回数制限に縛られない賢いAI活用を目指すことが、DX推進や業務自動化の成果につながります。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) 5ro5roblog – チャットGPT無料版は何回まで使える?2025年最新の回数制限と解除方法を徹底解説
- (*2) How to Bypass ChatGPT Plus Limit and Refresh Your Message Limits in 2025
- (*3) OpenAI Developer Community – ChatGPT Plus User Limits, valid for 2025
- (*4) GeeksforGeeks – How to Resolve ChatGPT Rate Limit Errors
- (*5) 暮らしの疑問解決メモ – ChatGPTで多発!「Too many concurrent requests」エラーが出た時のベストアクション
- (*6) Northflank — Deploy any project in seconds, in our cloud or yours. – ChatGPT usage limits explained: free vs plus vs enterprise
- (*7) ChatGPT Usage Limits: What They Are and How to Get Rid of Them
- (*8) OpenAI Developer Community – How to set organization usage limits?
- (*9) AIとプロンプトエンジニアリング – ChatGPTが遅い時間は?避けるべきピーク帯と対策まとめ
- (*10) romptn Magazine – ChatGPTの画像生成制限とは?無料版・有料版の違いや対処法を徹底解説
- (*11) An Opinionated Guide to Using AI Right Now