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はじめに
Grok3とは、質問に答えたり文章を作ったりする人工知能(AI)の1つです。X(旧Twitter)と関係が深く、会話だけでなく、いま起きている出来事を調べながら答える使い方も想定されています。
企業のDX推進担当者にとっては、「社内の調べ物」「文章作成」「問い合わせ対応」など、時間がかかりやすい作業を短時間にまとめる道具として検討しやすいのが特徴です。
この記事では、Grok3の開発元や機能、性能の見方、料金、使いどころ、注意点を、導入検討で迷いやすい順に整理します。途中で出てくる言葉は、できるだけ日常の言い方で説明します。
Grok3の基本情報

開発元とリリース時期
Grok3とは、イーロン・マスク氏が率いるxAI社が開発した対話型の人工知能モデルです。2025年2月にリリースした、と整理されています(参照*1)。
前の世代のGrok2より計算能力が10倍以上向上した、という説明もあります(参照*1)。
Grok3は、会話の相手になるだけでなく、検索しながら答えることも重視されています。たとえば、ウェブ検索と質問への回答に強いパーソナルアシスタントとして位置づけられ、数学・科学・プログラミングの評価テストで高い性能を示すという主張も示されています(参照*2)。
業務で見るなら、雑談用というより「社内外の情報を集めて、分かりやすい文章に直す」「複数の条件がある依頼を整理する」といった場面で価値が出やすい、という捉え方が現実的です。
Grok2からの進化
Grok3の進化をつかむ近道は、学習に使った計算の規模です。AI SMILYは、Grok 2と比べて学習に約10倍以上の演算能力を使い、NVIDIAのGPU「H100」を10万枚搭載したスーパーコンピュータ「Colossus」を使って、約2億GPU時間のトレーニングを行ったと説明しています(参照*3)。
数字をかみくだくと、学習に使う計算が増えるほど、文章のつながりや言い回し、問題の解き方のパターンを多く学べる可能性が高まります。AI SMILYは、その結果として学習時間の短縮と精度向上につながった、と整理しています(参照*3)。
また、Grok3は「インターネットとXの投稿を横断的に検索して要点をまとめて出力するDeepSearch」や、「大規模な強化学習を用いた推論モデル」が特徴だと説明されています(参照*3)。強化学習とは、良い答えに近づくように、試行錯誤で答え方を調整していく学び方です。
導入検討の視点では、「最新情報に寄せたい作業があるか」「正解が1つになりにくい業務文書を、矛盾なくまとめたいか」で、Grok3の向き不向きが見えやすくなります。
Grok3の主要機能

DeepSearch機能
Grok3のDeepSearch機能は、調べ物をしながら答えを作るための仕組みです。AI総研は、DeepSearchがキーワードに基づいてウェブ上の情報をリアルタイムで検索し、引用しながら、信頼性の高い情報提供を可能にすると説明しています(参照*4)。
一般的な会話型AIは、学習した内容をもとに答えを作ります。一方でDeepSearchは、その場で情報を探しに行く前提があるため、直近の出来事や新しい発表を扱いやすくなります。
業務で使うなら、たとえば「競合の新製品の発表内容を要点だけ整理する」「制度改定のポイントを社内向けに短くまとめる」といった、出典が必要な作業と相性がよいです。
キーワードは、製品名だけでなく「発表日」「料金」「対応国」「対象者」のような条件も一緒に入れると、必要な情報に寄せやすくなります。引用が出たら、引用元のページを開いて、数字や条件が同じかを照合する運用が合います。
推論モードとマルチモーダル対応
Grok3には、質問に答えるだけでなく、考え方の手順を強めるためのモードがあります。Built Inは、Grok 3がThink・Big Brain・DeepSearchの3モードを備えると整理し、Thinkは推論プロセスを有効にして問題を複数のステップに分解し、Big Brainは全サイズのモデルを使ってより複雑な質問に対して正確で洞察に富んだ回答を提供すると説明しています(参照*5)。
Thinkは、結論だけでなく「なぜそうなるか」を順序立てて組み立てたい場面に向きます。たとえば、社内の稟議書のたたき台を作るときに、前提・選択肢・判断理由を分けて書かせると、抜けや矛盾に気づきやすくなります。
Big Brainは、条件が多い依頼や、見落としが許されない整理で使い分けやすいモードです。たとえば、複数部門にまたがる業務フローの説明文を作るときに、前提条件を並べて矛盾がないか確認する用途に向きます。
また、Grok3はマルチモーダルAIモデルとして説明されています。マルチモーダルとは、文字だけでなく、画像など複数の種類の情報をまとめて扱う考え方です。Built Inは、Grok 3がマルチモーダルであり、Grokのチャットボットを動かし、高度な推論と検索機能を備えると説明しています(参照*5)。
文字の指示だけでは伝えにくい場面でも、画像など別の手がかりを足せると、意図のすれ違いを減らせます。対応している入力の種類は提供形態で変わるため、使う画面の案内で確認してから試すのが安全です。
Grok3の性能評価と見方

ベンチマーク結果
Grok3の性能は、いくつかの評価テストの点数で語られることがあります。たとえば、ある比較記事は、Grok 3がAIME 2025で93.3%、LiveCodeBenchで79.4%のスコアを持つと整理しています(参照*6)。AIMEは数学寄り、LiveCodeBenchはプログラミング寄りの評価として扱われることが多く、数字が高いほどその分野の問題に強い可能性が高い、という読み方になります。
ただし、点数はあくまで特定の形式の問題で測った結果です。たとえば、仕事のメールを自然な日本語で整える、社内向けの説明を分かりやすく直す、会議の議事録を読みやすく整える、といった日常の作業が同じように良くなるとは限りません。
それでもベンチマークを見る意味はあります。自社で想定する用途が、数学・科学・プログラミングのような「正解が比較的はっきりある問題」に近いなら、点数は判断材料になりやすいからです。
導入前の確認としては、ベンチマークよりも先に、実データを使わない形で「自社の典型的な依頼」を3〜5本ほど試し、文章の分かりやすさ、指示への従い方、根拠の出し方を比べる方が、判断がぶれにくくなります。
ベンチマークの限界
ベンチマークは便利ですが、見せ方で印象が変わることがあります。ESADEの解説記事は、発表とともに公開された図表がAIMEでGrok 3が他モデルを上回ることを示唆していた一方で、図ではGrok 3だけが2つの色の濃淡を使い、最初の回答と64回の試行で最も一般的な回答を区別して示していた、と指摘しています(参照*7)。
同記事で、ESADEのEsteve Almirall教授は、均一な基準で比較すべきで、そうしないとGrok 3が写真でよく見えるという解釈を示し、最初の回答だけを考慮すれば結果は完全に異なっていた可能性がある、と述べています(参照*7)。この指摘は、点数だけでなく、どう測ったか、何回試したか、どの結果を採用したかまで見る必要があることを示します。
さらに同記事でAlmirall教授は、高レベルの数学競技や博士レベルの試験に多くの人が参加するわけではなく、翻訳の正確さや適切さ、分かりやすさを求める人が多いとも指摘しています(参照*7)。つまり、点数が高いことと、日常の使いやすさが直結しない場面がある、ということです。
業務導入の観点では、モデルの賢さだけでなく、運用で困りやすい点も見ておくと判断しやすくなります。たとえば、DeepSearchの引用が十分に出るか、出典が古い情報に偏らないか、社内向けの言葉づかいに整えられるか、誤りが出たときに修正指示で直るか、といった観点です。
Grok3の料金と利用方法

料金プラン
Grok3の料金は、どこから使うかで整理の仕方が変わります。AI SMILYは、料金プランとしてX Premium+またはSuperGrokへの登録が必要で、Grok-3の利用やDeepSearch機能、推論機能へのアクセスなどの特典があると説明しています。具体的な料金は、X Premium+が月額6,080円または年額60,036円、SuperGrokが月額30ドルまたは年額300ドルです(参照*3)。
一方で、利用できる範囲は時期や提供形態で変わることがあります。マネーフォワード クラウドは、X(旧Twitter)のアカウントがあれば基本機能を無料で利用でき、有料版(X Premium+)では高機能が使える、という整理で紹介しています(参照*8)。
「まず触って判断したい」場合は、Grok3を搭載したアプリという入口もあります。たとえば株式会社piconのスマホ向けAI対話アプリ「GP Chat」は、Grok3を搭載し、毎日5通まで無料、無制限で使えるスタンダードプランは月額1,280円からと説明しています(参照*1)。
有料で増える価値は、回数制限が緩くなることだけではありません。DeepSearchや推論のような機能に触れられるかどうかが、用途によって差になります。調べ物が多い部門や、条件が多い文章作成が多い部門ほど、試す価値が出やすいです。
始め方と基本操作
Grok3の使い方は、大きく2通りに整理できます。Helpmeeeは、公式サイトからの利用とXからの利用の2通りがあり、公式サイトではGoogleアカウント、Xアカウント、Appleアカウントなどでログインでき、XからはブラウザやアプリからGrokにアクセスすると説明しています(参照*9)。
基本操作は、入力欄にやりたいことを書いて送るだけです。ただ、同じ質問でも、条件の書き方で答えの質が変わります。たとえば、目的、前提、対象読者、使ってよい情報、文字数を先に書くと、やり直しが減ります。
DeepSearchやThinkのようなモードが使える画面では、作業に合わせて切り替えます。調べ物ならDeepSearch、手順を踏んで考えたいならThink、条件が多いならBig Brain、というように使い分けると迷いにくいです(参照*5)。
社内で試すときは、いきなり全社展開より、影響が小さく効果が測りやすい作業から始めると整理しやすいです。たとえば「週次レポートの要約」「社内FAQの下書き」「議事メモの整形」のように、元の資料が手元にあって、正誤を人が確認できる作業が向きます。
Grok3の活用シーン

個人利用とビジネス利用
Grok3は、日常の作業から仕事まで幅広い用途に組み込みやすい形で紹介されています。PR TIMESの発表では、GP Chatが累計220万ダウンロードを突破し、献立作成、ビジネスメール作成、人生相談、学習サポートなどに対応すると説明しています(参照*1)。
個人利用では、献立の候補出しや、学習のつまずきの整理のように、正解が1つに決まらない作業で役立ちます。条件を短く並べて候補を複数出させると、比較しながら決めやすくなります。
仕事では、メール文のたたき台、説明文の言い換え、会議メモの読みやすい整形など、文章の下ごしらえに向きます。DeepSearchを使う場合は、引用が出る形で「社外に出せる情報」だけで下書きを作り、最終版は人が出典を確認しながら整える流れが合います。
効果を示すなら、たとえば「作成時間」「やり直し回数」「問い合わせの一次回答率」のように、数字で追える指標を決めておくと、PoCで終わりにくくなります。
研究・開発分野での活用
研究・開発では、長い文献やデータから必要な知識を抜き出す作業が重くなりがちです。北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は、研究にGPT-4o、GPT-4.5、Claude Opus 4、Grok3といった大規模言語モデルを知識抽出ツールとして活用し、知見を体系的に取り出したと説明しています(参照*10)。大規模言語モデルとは、大量の文章を学習して文章を作るAIのことです。
JAISTは、訓練データにない元素を含む未知合金系への外挿的予測を実現し、予測精度が86~92%に達したとも示しています(参照*10)。
ここで押さえたい点は、Grok3が単独で結論を出す道具としてではなく、文献から情報を取り出して整理する部品として組み込まれていることです。
ビジネスでも考え方は近く、たとえば「規程やマニュアルから該当箇所を抜き出す」「複数の資料の共通点と違いを表にする」といった、根拠に戻れる形の作業に寄せると、現場で受け入れられやすくなります。
Grok3利用時の注意点

情報の検証と出典確認
Grok3はX上の情報も参照して答えを作れるため、話題の動きに追随しやすい一方で、未検証の投稿が混ざる可能性があります。マネーフォワード クラウドの解説は、Xの情報には未検証の投稿も含まれることがあるため、ビジネス利用時は一次情報の確認を推奨すると説明しています(参照*8)。
確認のやり方はシンプルです。発表なら企業の公式発表、統計なら公的機関や調査主体の資料、料金なら公式の料金ページ、というように、元の情報に戻ります。DeepSearchで引用が出る場合は、引用元のページを開いて、数字や条件が同じかを照合します。
金額、日付、人数、規約の条件のように、少し違うだけで意味が変わる情報は、引用元の文面を社内メモに残しておくと、後で説明しやすくなります。
社内で運用ルールを作るなら、「社外に出す文書は出典リンクを必須にする」「意思決定に使う数値は一次情報を確認する」のように、場面ごとの線引きを決める形が取りやすいです。
機密情報とコンプライアンス
外部のサービスに文章を送る以上、入力した内容は社外に出る前提で扱う必要があります。AIフレンズは、Grok3は外部接続で情報を収集する性質上、送信データの取り扱いに注意が必要で、利用規約やセキュリティポリシーを社内ルールと整合させることが不可欠だと説明しています(参照*11)。
同記事は、利用規約に不正利用や法令違反の禁止事項が含まれ、違反時にはアカウント停止などのリスクがあるとも示しています(参照*11)。仕事で使うなら、個人情報、取引先情報、未公開の売上や原価、契約書の原文などは、そのまま貼り付けない運用が基本になります。
現実的な進め方としては、社外に出してよい情報だけで下書きを作り、最後の仕上げは社内の資料を見ながら人が行う形が取りやすいです。
どうしても機密に触れる作業で使いたい場合は、入力してよい範囲、承認の手順、ログの扱いを先に決めておくと、現場の不安が減ります。
おわりに
Grok3とは、xAI社が2025年2月にリリースした対話型の人工知能モデルで、検索しながら答えるDeepSearchや、Think・Big Brainといった推論モードを特徴として整理できます(参照*1)(参照*5)。
性能の数字は参考になりますが、測り方や見せ方で印象が変わるため、用途に近い形で小さく試し、文章の分かりやすさや根拠の出し方まで確認する視点が合います(参照*7)。
個人の文章作成から研究の知識抽出まで、組み込み方は幅があります。便利さが増えるほど、出典確認と機密情報の扱いが論点になるため、試す作業を絞り、社内ルールとセットで進めると、導入判断がしやすくなります。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 日本最速!AIチャットアプリ「GP Chat」、xAI社の最新AIモデル「Grok3」を国内初搭載
- (*2) Glopedia – Grok 3 (xAIのAIモデル)
- (*3) AIsmiley – Grok 3は世界一賢い?Xの最新AIの特徴・料金プランを解説
- (*4) AI総合研究所 – Grok3とは?主要機能や使い方、料金体系をわかりやすく解説 | AI総合研究所
- (*5) Built In – What Is Grok 3?
- (*6) SY Partners、ベトナム発SIer – 【企業向け】Grok 3、Deepseek R1、GPT-4.5の比較・選択方法・最適導入戦略
- (*7) Which is the best AI? The case of Grok 3 and the benchmark problem
- (*8) AIの基礎知識 | 人工知能・AIを活用した、様々な業務の自動化、効率化に役立つ基礎知識をご紹介します。 – 次世代AI「Grok-3」の使い方とは?料金、日本語性能、無料での利用制限まで解説
- (*9) Grok3とは?特徴・使い方・活用事例を解説
- (*10) JAIST 北陸先端科学技術大学院大学 – 科学的発見を加速するAI活用フレームワークを開発 ~データとAIが抽出した分野横断的知識を統合し、未知の高エントロピー合金の予測を可能に~
- (*11) AIフレンズ – Grok3とは?【地球上で最も賢いAI】の特徴・料金プラン・活用法を徹底解説