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はじめに
AIアシスタント「Claude」を使い始めるとき、そもそもどこの国で作られたサービスなのかが気になる方は多いのではないでしょうか。開発元の所在地は、データの扱いや利用制限、今後のサービス方針に直結するため、知っておく価値があります。
この記事では、Claudeを開発したAnthropic社の本拠地や設立の経緯から、世界各国での利用状況、地政学的なリスク、そして利用時に注意すべき国・地域の制限まで、押さえておきたいポイントを順に取り上げます。
Claudeは「アメリカ生まれ」のAI──開発元Anthropic社の基本情報

サンフランシスコ本社とシリコンバレーの立地優位性
Claudeはアメリカ合衆国で開発されたAIです。開発元であるAnthropic社は、カリフォルニア州サンフランシスコに本社を構えています。AIの安全性に特化したアメリカの企業が手がけるサービスであり、「どこの国のAIか」という問いに対しては明確に「アメリカ」と答えられます(参照*1)。
サンフランシスコを含むカリフォルニア州には、世界のトップAI企業のうち32社が拠点を置いています(参照*2)。AI関連の研究者やエンジニア、投資家が集中するこの地域に本社を持つことで、Anthropic社は人材の確保や技術的な協業の面で有利な環境を確保しています。Claudeの開発背景を理解するうえで、シリコンバレーのエコシステムの存在は見逃せない要素です。
Anthropic社の設立経緯と元OpenAI研究者たちの背景
Anthropic社は2021年に設立されました。創業メンバーは元OpenAIの研究者たちで、AIの安全性とアラインメント、つまり人間の意図とAIの動作を一致させる研究に特化する目的で独立しています。シリコンバレーの技術エコシステムの中心で事業を展開しており、安全性を重視する姿勢が設立の出発点でした(参照*1)。
CEOで共同創設者のDario Amodeiをはじめ、Anthropic社のメンバーはClaude を世界に届ける役割を担っています(参照*3)。OpenAIという大規模な組織から離れてまで安全性に軸足を置いた点は、Claudeの開発方針を左右する根幹部分です。Claudeがどこの国のどのような思想を持つ組織から生まれたかを知ることは、このAIの特徴を理解する第一歩になります。
Anthropic社のグローバル展開──日本オフィスとアジア戦略

東京オフィスの開設と日本統括責任者の任命
Anthropic社はアジア初のオフィスとして東京を選びました。日本市場へのコミットメントを深める一環として、Tojo Hidetoshi氏を日本統括責任者に任命しています(参照*4)。
Hidetoshi氏は日本国内で技術系企業を拡大してきた経験を持ちます。直近ではSnowflakeの日本代表として現地の運営をゼロから構築し、大きな成長を達成しました。それ以前にはGoogle Cloud JapanやMicrosoftで、米国本社と日本子会社の両方でチームを率いた実績があります。東京オフィスは、企業や政策立案者、Amazon BedrockやGoogle Cloud Vertexといったプラットフォームのパートナー、さらに学術・創造的産業と日本およびアジア全体でのパートナーシップを深める拠点として位置づけられています(参照*4)。
楽天・NRI・パナソニックなど日本企業との連携実績
Claudeの日本での導入はすでに進んでいます。AnthropicのCEO Dario Amodei氏は、楽天、NRI、パナソニックがすでにClaudeを活用していることに言及しました。これらの企業は、日常業務の改善や新しい体験の構築にClaudeを創造的な方法で取り入れています(参照*4)。
同氏はまた、日本のパワーユーザーや企業にClaudeを導入して以来、卓越した自然発生的な採用が見られると述べています。アメリカ発のAIでありながら、日本市場において大手企業の実務に組み込まれている点は、利用を検討する際の判断材料になります。どの業種・業務でClaudeが使われているのかを自社の状況と照らし合わせて確認してみてください。
Claudeが使われている国と利用傾向──Anthropic Economic Indexの分析

利用量トップ5と人口あたり採用率の国際比較
Claudeの利用量を国別に見ると、アメリカが他のどの国よりも圧倒的に多い状況です。2位がインド、それに続いてブラジル、日本、韓国がほぼ同じ割合で並んでいます(参照*5)。
一方で、生産年齢人口あたりの採用率という指標で見ると順位が変わります。Anthropic AI Usage Index(AUI)のデータによると、イスラエルやシンガポールのように小規模ながら技術的に進んだ国が、人口あたりのClaude採用率で上位に立っています。総量では大国が優位でも、普及の深さを測るには人口あたりの数値で比較する視点が必要です。自国や取引先の国がどの位置にあるかを把握しておくと、AI活用の進み具合を見積もる助けになります。
GDP・所得水準とAI採用率の相関
Claudeの採用率は、その国の経済力と密接に関係しています。AUIのデータからは、1人あたりGDPとClaudeの利用指標の間に強い相関が確認されました。具体的には、1人あたりGDPが1%高い国では、AUIが0.7%高くなるという関係が見られます(参照*5)。
イスラエルやシンガポールが人口あたりの採用率で高い水準にあるのも、所得水準の高さである程度説明できる可能性が指摘されています。AI導入を検討する際には、自社の属する市場の経済水準がどの程度AIの浸透に影響しているかを把握しておくと、競合他社の動きを読む材料になります。
インドにおけるClaude利用の特徴と生産性加速
インドはClaude.aiの総利用量の5.8%を占め、アメリカに次ぐ2位です。ただし現状の採用はまだ一部に集中しており、人口全体に対してアクセスを広げる余地が大きいことが示されています(参照*6)。
生産性の面では目覚ましい数字が出ています。インドのユーザーがClaude付きでタスクを完了するのにかかる時間は平均14.8分で、Claude無しでは3.8時間かかるタスクに相当します。つまり約15倍の生産性加速です。世界全体では、Claude無しで3.1時間かかるタスクを平均15.4分で完了しており約12倍の加速ですから、インドの加速率は世界平均を上回っています。利用先の国でどの程度の効率化が見込めるかを検討する際に、この数値は参考になります。
米国発AIゆえの地政学リスク──中国規制とサイバー攻撃事例

Anthropic社による対中国・制限地域への販売規制強化
Claudeがアメリカの企業によって開発されている以上、国際的な安全保障上の判断がサービス提供範囲に直接影響します。Anthropic社は、中国のような地域について独自の販売制限を強化しました。同社は、こうした地域の管轄下にある企業がデータの共有や情報機関との協力を法的に求められるリスクを指摘しており、企業の所在地にかかわらずその圧力に抵抗するのが難しいとしています(参照*7)。
具体的には、サービス利用が許可されていない法域の管轄から統制を受ける所有構造を持つ企業や組織を対象に、運営場所にかかわらず利用を禁止しています。直接または間接的に、非対応地域に本社を置く企業が50%を超えて所有する組織も禁止対象に含まれます。海外拠点を持つ企業がClaudeを導入する場合は、自社の資本構成や子会社の所在地が制限に抵触しないかを事前に確認してください。
中国ハッカーによるClaude悪用事例と安全対策の課題
Anthropic社は、Claudeが中国のハッカーによって悪用された事例を公表しました。同社はこれを「初めて報告されたAI主導のサイバー諜報作戦」と呼んでいます(参照*8)。
この作戦では、全体の80%から90%がAIによって実行されたと報じられています。人間のオペレーターが標的組織を特定した後、Claudeを使って内部の価値あるデータベースを特定し、脆弱性のテストを行い、データへアクセスするためのコードを生成させていました。米国発のAIだからこそ地政学的な標的になりやすい側面があり、利用する側としても、APIキーの管理やアクセス権限の設計など、自社のセキュリティ体制を見直す機会にしてください。
競合AIとの比較で見るClaudeの立ち位置──OpenAI・DeepSeek・Kimi

米国勢(OpenAI・Google)との開発思想の違い
同じアメリカを拠点とするAI企業でも、ClaudeとOpenAIのモデルでは力の入れどころが異なります。Anthropic社はClaude Opus 4でコーディング性能に焦点を当てました。一方、OpenAIのGPT-4.1は入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり8ドルという料金設定を打ち出しています(参照*9)。
これに対してClaude Opus 4は入力100万トークンあたり15ドル、出力100万トークンあたり75ドルと、価格帯が大きく異なります。安全性研究から出発したAnthropic社と、幅広い汎用性を志向するOpenAIとでは開発の優先度が違い、それが料金や得意領域の差となって表れています。自社の用途がコーディング寄りなのか汎用的なテキスト処理なのかを整理したうえで、費用対効果を比べてみてください。
中国勢(DeepSeek・Kimi K2)の台頭と価格・性能比較
中国発のAIモデルも急速に存在感を増しています。アリババが出資するMoonshot社がリリースしたKimi K2は、ChatGPTやClaudeに匹敵する性能を掲げて登場しました。前述のとおり、Claude Opus 4の入力料金は100万トークンあたり15ドル、出力は75ドルですが、中国勢はより低コストでの提供を打ち出す傾向にあります(参照*9)。
ただし、価格だけで比較できない要素もあります。OpenAIは、中国、イラン、北朝鮮、ロシアの悪意ある行為者が自社AIツールをサイバー作戦に利用したことを検出したと報告しています。どこの国のAIを選ぶかは、コストや性能だけでなく、データがどの法域で扱われるかという安全保障上の観点も含めて判断する必要があります。
Claudeを利用する際の注意点──国・地域による制限と対処法

Anthropicのサポート対象国と非対応地域の確認方法
Anthropic社のサービス利用規約は、法的・規制的・セキュリティ上のリスクを理由に、特定の地域でのサービス利用を禁止しています。しかし、制限地域に本拠を置く企業が他国に設立した子会社を通じてアクセスを続けるケースがあり、同社は規制の強化を進めてきました(参照*7)。
Claudeが利用できる国の完全なリストは、「Anthropic | Supported Countries」で確認できます(参照*10)。導入を検討する段階で、まず自社や拠点の所在国が対象に含まれているかどうかを確認してください。
渡航先からのアクセスによるアカウントBANリスクと回避策
国内で問題なく使えていても、渡航先によってはリスクが発生します。Anthropic社は特定の国からのアクセスを制限しており、禁止国からClaudeにアクセスしようとすると、Syracuse UniversityのClaudeアカウントがAnthropic社によってBANされることがあります(参照*10)。
出張や旅行で非対応地域を訪れる予定がある場合は、渡航前にSupported Countriesの一覧で訪問先が含まれているかを必ず確認してください。アカウントがBANされると復旧が困難になる場合があるため、渡航先での業務にClaudeを組み込んでいるケースでは、代替手段も事前に用意しておくと安心です。
おわりに
Claudeはアメリカ・サンフランシスコに本社を置くAnthropic社が開発した、安全性を重視するAIです。日本をはじめ世界各国で利用が広がる一方、米国発であるがゆえの地域制限や地政学的リスクも存在します。
自社の所在国や資本構成が制限に抵触しないかの確認、渡航先でのアクセス可否の事前チェック、そして競合モデルとの費用・性能の比較を行ったうえで、Claudeの活用方針を検討してみてください。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) ClaudeLog – Claude AI from Which Country
- (*2) Governor of California – Governor Newsom deploys first-in-the-nation GenAI technologies to improve efficiency in state government
- (*3) How to Survive Artificial Intelligence
- (*4) Anthropic appoints Hidetoshi Tojo as Head of Japan and announces hiring plans
- (*5) Anthropic Economic Index: Tracking AI’s role in the US and global economy
- (*6) India Country Brief: The Anthropic Economic Index
- (*7) Updating restrictions of sales to unsupported regions
- (*8) Vox – The scary implications of the world’s first AI-orchestrated cyberattack
- (*9) CNBC – Alibaba-backed Moonshot releases new Kimi AI model that beats ChatGPT, Claude in coding — and it costs less
- (*10) Artificial Intelligence (AI)