Anthropic新機能Dispatchとは?Claude進化の全貌とOpen Claw比較

2026.03.18

WorkWonders

Anthropic新機能Dispatchとは?Claude進化の全貌とOpen Claw比較

はじめに

AnthropicがClaudeに搭載した新機能Dispatchは、AIエージェントの使い方を大きく変える仕組みとして登場しました。スマートフォンからでもデスクトップからでもタスクを割り当て、複数の作業をバックグラウンドで同時に処理できるのが特長です。

この記事では、Dispatchの具体的な機能や始め方に加え、Microsoft Copilot Co-workとの連携、そしてオープンソースのAIエージェントであるOpenClawとの違いやセキュリティ上の注意点を整理します。

Claude Coworkの背景とDispatch登場までの経緯

Claude Coworkの背景とDispatch登場までの経緯

Anthropicが目指すエージェントAIの方向性

Anthropicは、チャットによる質疑応答だけでなく、AI自身が作業を実行する「エージェント型」の方向性を打ち出してきました。チャットが答えの得方を変え、Claude Codeが開発者のソフトウェア構築の方法を変えたとAnthropicは述べています。そしてCoworkがその同じ実行力をすべての人にもたらすと位置づけています(参照*1)。

ここでいうエージェント型とは、AIが人間の指示を受けて自ら手順を考え、ファイル操作やツール連携まで実行する仕組みを指します。単なる対話ではなく「仕事の実行者」としてAIを動かすという考え方が、Dispatch登場の土台になっています。こうした思想を把握しておくと、Dispatchの各機能がどのような狙いで設計されたかを理解しやすくなります。

Coworkの研究プレビューから機能拡張への流れ

CoworkはもともとClaude Codeのエージェント機能をClaudeデスクトップアプリへ持ち込む形で始まりました。コーディング以外の知識作業を可能にし、ローカルファイルとMCP連携への直接アクセスを提供する隔離された仮想マシン(isolated VM)上で動作します(参照*2)。

Claude Codeの利点を取り込み、プログラミングをしない人にも恩恵を届ける汎用的なエージェント型ツールとして新たに立ち上げられたのがCoworkです(参照*3)。この研究プレビューの段階を経て、タスクの割り当て・同時並行処理・外部サービスとの統合といった機能が順次追加され、Dispatchという形で結実しました。Coworkの進化の流れを押さえることが、Dispatchの機能を正確に理解する出発点になります。

Dispatchとは何か――機能の全体像と仕組み

Dispatchとは何か――機能の全体像と仕組み

永続スレッドによるモバイル・デスクトップ連携

Dispatchの中核にあるのが「永続スレッド」と呼ばれる仕組みです。Coworkは電話やデスクトップからアクセスできる、Claudeとの連続した1つの会話を提供します。Claudeにタスクを割り当て、別の作業をしてから戻ると、完了した作業が待っています。Claudeはユーザーのコンピュータ上で動作し、ローカルファイル、コネクタ、プラグインにアクセスし、完了時に結果を通知します(参照*4)。

ProおよびMaxプランのユーザーはClaude DesktopまたはClaude for iOS/Androidを介して、Coworkのタスクを管理するための永続的なエージェントスレッドにアクセスできます(参照*2)。つまり、出先でスマートフォンから指示を出し、自宅やオフィスのデスクトップで結果を確認する、といった使い方が可能になります。自分の作業環境に合わせてどの端末から指示を出すかを検討しておくとよいでしょう。

タスクの同時並行処理(マルチDispatch)

Dispatchのもう一つの大きな特長が、複数タスクの同時並行処理です。1つのプレゼンテーションや1つのスプレッドシートを作るのではなく、同時に5つ、6つ、7つのタスクがバックグラウンドで動くような形態が可能です(参照*5)。

これにより、例えば資料作成・データ整理・調査といった異なる種類の作業を一度にClaudeへ割り当てられます。繰り返しタスクやオンデマンドのタスクをCowork上で作成・スケジュールする機能も導入されています(参照*2)。同時に走らせたいタスクの優先度や依存関係をあらかじめ整理しておくと、マルチDispatchを効率的に活用できます。

コネクタ・プラグイン・ローカルファイルとの統合

Dispatchが単なるチャットと大きく異なるのは、外部のツールやデータと直接つながる点です。プラグインを使うことで、Claudeにどのツールとデータを参照するか、重要なワークフローの処理方法、チームが一貫した成果を出せるようにするスラッシュコマンドの扱い方を指示できます(参照*3)。

Claude Desktopの新しいCustomizeセクションは、スキル、プラグイン、コネクタを1か所に集約しています(参照*2)。業務で使うツールやファイルの保存場所を確認し、どのコネクタやプラグインを有効にするかを事前に決めておくと、セットアップがスムーズに進みます。

Dispatchの始め方――セットアップ手順と対応プラン

Dispatchの始め方――セットアップ手順と対応プラン

Dispatchを使い始めるには、いくつかの準備が必要です。まずClaude Desktopをダウンロードまたは更新し、iOS/Android用のClaudeも同様にダウンロードまたは更新します。次にCoworkをスマートフォンまたはデスクトップのいずれかで開き、左側のパネルで「Dispatch」をクリックします。機能の説明ページに移動するので「Get started」をクリックし、次の画面でClaudeにファイルへのアクセスを許可してコンピュータを起動したまま維持する設定をオンにします。最後に「Finish setup」をクリックすれば、DispatchセクションでClaudeへのメッセージを開始できます(参照*4)。

対応プランについては、Maxプランのユーザーへまず展開が始まり、その後2日間でProプランへと順次展開される流れです(参照*2)。なお、Coworkはチャットボットではなく、ユーザーのマシン上の仮想マシンでコードを実行し、ローカルファイルを読み書きし、ウェブを閲覧し、スケジュールされたタスクを待機せずに実行できる仕組みです(参照*6)。セットアップ前に、自分の契約プランとデスクトップ環境の要件を確認しておくことが第一歩になります。

Microsoft Copilot Co-workとの連携が示すDispatchの可能性

Microsoft Copilot Co-workとの連携が示すDispatchの可能性

M365統合とマルチモデル自動ルーティング

MicrosoftはCopilot Co-workを発表し、Anthropicの作業自動化サービスと統合したプラットフォームを提供しています。この動きは、AIを観察者から本格的なヘルパーへ変えることを目的としています(参照*7)。

Copilot Co-workの大きな特長は、すべてのM365アプリケーションとその中に保存されたデータに統合されている点です。Work IQと呼ばれるこの仕組みにより、オフィスアプリケーションとワークフローに深く統合され、クラウドでホストされるためデバイス上でローカルに動かす必要がありません(参照*5)。DispatchのローカルVM実行とM365のクラウド統合が組み合わさることで、どのような作業分担が可能になるかを把握しておくと、導入の判断材料になります。

企業導入の実績と今後の展望

M365 Copilotの導入は急速に進んでいます。直近1年間で日間アクティブユーザーが10倍に増加し、Fortune 500企業の90%がM365 Copilotを利用しています(参照*5)。

こうした大規模な普及の流れのなかで、AnthropicのDispatchがCopilot Co-workと統合される形は、Claudeが企業の業務基盤に組み込まれる道筋を示しています。自社で使っているM365のライセンス状況とDispatch対応プランの両方を照合し、導入範囲を見極める作業が求められます。

Open Clawとの比較――Dispatchとの決定的な違い

Open Clawとの比較――Dispatchとの決定的な違い

アーキテクチャとセキュリティモデルの差異

OpenClawは、WhatsApp、Telegram、Slack、Discordなどのメッセージングアプリに接続し、ユーザーを代表して自動的に行動するオープンソースのAIエージェントです。メール送信、端末コマンド実行、ファイル管理、ウェブ閲覧、リンクしたすべてのサービスの制御を担い、ローカルで実行され、セッションをまたいだ記憶を保存します(参照*8)。

一方、Dispatchを含むCoworkは隔離された仮想マシン上で実行される設計です。OpenClawではlocalhostからの接続を自動的に信頼する前提に欠陥があり、CVE-2026-25253としてCVSSスコア8.8と評価されるトークン窃取の脆弱性が見つかりました。ウェブサイトも同じローカルアドレスから接続を発生させ得る点が考慮されていなかったのです(参照*8)。AIエージェントを導入する際には、実行環境の隔離レベルと信頼モデルの違いを必ず確認してください。

スキル拡張の安全性(ClawHub問題との対比)

OpenClawにはClawHubというコミュニティ運営のマーケットプレイスがあり、ユーザーが作成したスキルを公開・共有できます。しかし、セキュリティ企業がClawHubの2,857件のスキルを監査したところ、341件の悪意あるエントリが発見されました。そのうち335件は共通の戦術とインフラに基づく単一の協調作戦に起因するものでした(参照*8)。

DispatchのCoworkでも、プラグインはスキル、スラッシュコマンド、サブエージェント、MCPサーバーを束ねており、1つのプラグイン導入でClaudeの行動範囲が大幅に広がります。そのためプラグインはソフトウェアの依存関係のように扱うべきとされています(参照*6)。OpenClawのClawHub問題を踏まえると、どのプラットフォームであれ拡張機能の出所と内容を精査する手順が不可欠です。

Dispatch導入時の注意点とセキュリティリスク

Dispatch導入時の注意点とセキュリティリスク

プロンプトインジェクションとエージェント的ミスアライメント

Dispatchを使ううえで警戒すべきリスクの一つがプロンプトインジェクション(AIへの命令を不正に埋め込む攻撃手法)です。ウェブページ、メール、文書に埋め込まれた隠された指示がClaudeの行動を乗っ取る可能性があり、AnthropicはChromeでのClaudeへの攻撃成功率を約1%と自己報告しています(参照*6)。

もう一つの懸念がエージェント的ミスアライメントです。Anthropicは企業環境を想定した状況で複数の開発元の16モデルをストレステストし、実害を引き起こす前に潜在的にリスクのあるエージェント的行動の特定を進めています。そのシナリオではモデルが自律的にメールを送信し、機微な情報へアクセスすることを許可した条件で検証が行われました(参照*9)。モバイルからデスクトップのAIエージェントを遠隔操作する場合、スマートフォンからの指示がコンピュータ上でローカルファイルの読み取り・移動・削除、接続サービスとの相互作用、ブラウザの操作といった実際の動作を引き起こす連鎖が生まれます(参照*4)。Dispatchが扱えるファイルやサービスの範囲を事前に把握し、意図しない操作が起きた場合の影響を見積もっておく作業が欠かせません。

企業管理者が取るべきコントロール設定

Dispatchを組織で導入する際、管理者が知っておくべき制約があります。Coworkへのアクセスは研究プレビュー中、ユーザーや役割ごとには制限できません。組織全体で全員がアクセスするか、誰もアクセスしないかのいずれかです(参照*6)。

この「全か無か」の管理者トグルは、部門ごとにアクセス範囲を分けたい企業にとっては大きな制約になりえます。プラグインはスキル、スラッシュコマンド、サブエージェント、MCPサーバーを束ねる構造であるため、導入するプラグインの選定を慎重に行い、ソフトウェアの依存関係と同様の管理ポリシーを適用する運用が求められます。管理者トグルの仕様、プラグインの許可範囲、ファイルアクセスの権限をチェックリスト化して、導入前に組織内で合意を取る手順を踏んでください。

おわりに

AnthropicのDispatchは、Claudeを「対話するAI」から「仕事を実行するAI」へ押し上げる機能です。永続スレッドによるモバイル・デスクトップ連携、マルチタスクの同時処理、プラグインによる外部ツール統合が、その核となる仕組みです。

一方で、プロンプトインジェクションのリスクや管理者トグルの制約、OpenClawのClawHub問題が示す拡張機能の安全性など、導入前に確認すべき項目も多く存在します。対応プランの確認、プラグインの精査、セキュリティポリシーの策定を順番に進めることが、Dispatchを安全に活用するための出発点になります。

監修者

安達裕哉(あだち ゆうや)

デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))

参照

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