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はじめに
ClaudeをAWSの環境で活用したいと考える企業や開発者が増えています。Amazon Bedrockを通じてClaudeを利用すれば、インフラ管理の手間を減らしながら高性能なAIモデルを業務に組み込めます。
この記事では、Bedrockの仕組みや導入手順、料金体系、実践的な構成パターン、さらにはパートナー活用やキャパシティ面の課題まで、ClaudeをAWSで使ううえで押さえておきたいポイントを順に取り上げます。
Amazon BedrockでClaudeを使う仕組みと全体像

Amazon Bedrockの基本構造とフルマネージドサービスとしての特徴
Amazon Bedrockは、主要なAI企業が提供する高性能なファウンデーションモデルを選択して使える、フルマネージド型のサービスです。フルマネージドとは、サーバーの構築や運用をAWSが代行してくれる形態を指します。利用者はモデルの選定とAPI呼び出しに集中でき、インフラの保守作業から解放されます(参照*1)。
AWSの既存サービスとの親和性が高い点も特徴です。たとえばAPI GatewayやLambda、DynamoDBといったサーバーレス基盤と組み合わせることで、会話機能を持つアプリケーションをスムーズに構築できます。AWS上で動いている既存システムにClaudeを追加する場合も、新たなインフラを別途用意する必要がありません。自社のAWS環境で使えるモデルの選択肢を確認し、プロジェクトに合うものを見極めることが導入の第一歩になります。
Bedrock上で利用可能なClaudeモデルの種類と世代
Amazon Bedrockでは複数の世代のClaudeモデルが提供されています。Claude Opus 4.5は、コーディング、エージェントワークフロー、コンピュータの使用、オフィス作業の分野で新しい基準を設定しつつ、従来のOpusレベルの知能をコストの3分の1で提供するモデルです(参照*1)。
一方、Sonnet 4.6はSonnet 4.5からの完全なアップグレードとして位置づけられ、ソフトウェア開発においてOpus 4.6に匹敵する知能を持ちながら、よりトークン効率が高く、ワークフロー全体で高速かつ高品質なタスク完了を実現します(参照*2)。
用途によって求められる性能やコストのバランスは異なります。高度な推論が必要なタスクにはOpus系、速度とコスト効率を重視する場面にはSonnet系といった形で、モデルの特徴と自社のワークロードを照らし合わせて選択してください。
AnthropicとAWSの戦略的パートナーシップの背景
ClaudeがAWS上で手厚く提供されている背景には、AnthropicとAmazonの深い資本関係があります。AmazonはAnthropicに80億ドルを出資する大株主であり、保有する株式の価値は2月6日時点で606億ドル(転換社債458億ドルおよび無議決権優先株148億ドル)に達しています(参照*3)。
さらにAnthropicは、AWSをプライマリ・クラウド・プロパイダーおよびプライマリ・トレーニング・パートナーに指定しています。プライマリ・クラウド・プロパイダーとは、優先的にワークロードを配置するクラウドサービス提供元のことです。プライマリ・トレーニング・パートナーとは、AIモデルのトレーニングサービスを優先的に提供する相手を意味します。この関係により、Bedrockには最新のClaudeモデルが早期に投入される構造が生まれています。利用者の立場では、この強固な提携が今後のモデル提供スピードや安定性にどう影響するかを見ておくことが大切です。
Claude × Bedrockの導入手順と初期設定

モデルアクセス有効化とユースケース提出の新手順
新規作成したAWSアカウントでClaudeモデルを使いたい場合、まずマネジメントコンソールからBedrockのページにアクセスします。「プレイグラウンド」からClaudeモデルを選ぶと、ユースケース提出フォームが表示されます。必要情報を送信すると、2〜3分ですべてのClaudeモデルが利用可能になります。API経由での操作でも同様にユースケース提出が可能です(参照*4)。
初期設定として意識しておきたいのは、ユースケース提出が必須であるという点です。利用目的やユースケースの情報を事前に整理しておけば、フォーム入力もスムーズに進みます。アカウント開設直後であっても、数分でモデルを試せる状態が整う点は、検証段階のスピードを左右する要素です。
Claude CodeをBedrock経由で利用するためのセットアップ
Claude Codeは、AIを活用したコーディング支援ツールです。Bedrock経由で利用するには、環境変数の設定が必要になります。具体的には、CLAUDE_CODE_USE_BEDROCKを1に設定し、ANTHROPIC_MODELに利用したいモデルのIDを指定し、AWS_REGIONにリージョン名を入れます。たとえば東京リージョンであれば「ap-northeast-1」を指定します。環境変数を設定すれば準備は完了です(参照*5)。
AWSではClaude Codeの使い方を学ぶハンズオン形式のイベントも開催されています。半日かけてClaude Codeの操作を体験し、最終的には動くプロダクトをその場で構築して成果物を発表する内容です。当日はAWSパートナーを含むAWSエンジニアが現地でサポートし、本番導入に向けた相談もできる構成になっています(参照*6)。
Bedrock経由のClaude料金体系とコスト最適化

モデル別のトークン単価とキャッシュ機能による削減
Bedrock経由でClaudeを利用する際の料金は、モデルごとのトークン単価で決まります。たとえばClaude Sonnet 4のアジア太平洋東京リージョンでの料金は、入力トークン1,000個あたり0.003ドル、出力トークン1,000個あたり0.015ドルです。キャッシュ機能を活用すればさらにコストを下げることも可能です(参照*5)。
キャッシュ機能とは、同じ入力に対する応答結果を再利用する仕組みです。繰り返し発生する問い合わせやテンプレート的な処理が多いワークロードでは、キャッシュによるコスト削減効果が大きくなります。自社の利用パターンを分析し、キャッシュの適用余地がどこにあるかを洗い出すことが、費用を抑える第一歩です。
クロスリージョン推論とオンデマンド・プロビジョンドの選択基準
Claude Opus 4.5は、複数の場所でのグローバルクロスリージョン推論を通じてAmazon Bedrockで利用可能です(参照*1)。クロスリージョン推論とは、リクエストを複数のリージョンに分散して処理する仕組みで、1つのリージョンにアクセスが集中した場合でも安定した応答を得やすくなります。
Sonnet 4.6はUS-East-1(バージニア北部)およびEurope(フランクフルト)リージョンで利用でき、Sonnet 4.5と同様に1.3倍のクレジット乗数を備えています。開発作業においてコスト効率が良い設計になっています(参照*2)。オンデマンド利用は必要なときだけ課金される方式であり、プロビジョンド方式は事前にスループットを確保する方式です。処理量の変動幅やレイテンシ要件に応じて、どちらの方式が適しているかを比較検討してください。
実践的なアーキテクチャ構成パターン

Function Calling × Lambdaで実現する拡張可能な会話アーキテクチャ
Bedrockの外部機能呼び出し(Function Calling)機能を活用すると、Lambda関数として外部の機能を追加し、会話の中からその機能を呼び出せるようになります。Function Callingとは、AIモデルが応答の過程で外部の処理を自動的に呼び出す仕組みのことです。これにより、単なる質問応答にとどまらない、実務に直結したアプリケーションを構築できます。
具体的な構成例としては、ユーザーリクエストの受信にAPI Gateway、バックエンド処理にLambda、トークン管理にDynamoDB、生成AIとの対話にBedrockを使うサーバーレスアーキテクチャがあります(参照*7)。サーバーレスとは、サーバーの管理をAWS側に任せ、コードの実行にだけ集中できる構成です。
この構成では、会話の流れに応じてLambda関数を増やすだけで機能を拡張できます。たとえば在庫照会や予約受付といった業務処理をLambdaとして追加すれば、Claudeが会話の文脈を判断して適切な処理を呼び出してくれます。拡張したい業務処理をLambda関数としてどう分割するかが、設計段階での検討項目になります。
RAG構築や既存システム連携の設計ポイント
社内のドキュメントやマニュアルなど独自のデータを参照してAIが正確に回答する仕組みとして、検索拡張生成(RAG: Retrieval-Augmented Generation)があります。RAGとは、外部の情報源から必要なデータを検索してからAIに回答を生成させる手法です。社内データベースやAPIとのセキュアな接続を実現すれば、業務フローへの組み込みも可能になります(参照*8)。
RAGを導入する際には、検索対象となるデータの範囲や更新頻度、アクセス権限の設計が重要になります。Claudeが参照するデータの品質がそのまま回答の精度に直結するため、古い情報や重複データの整理を事前に行うことが欠かせません。既存システムとの接続にあたっては、API経由でどの情報をどの粒度で渡すかを洗い出し、セキュリティ要件と照らし合わせて設計を進めてください。
リセラー契約とパートナー活用による導入支援

Anthropic認定リセラー制度とAWS再販プログラムの概要
Anthropicは、Amazon Bedrock上のClaudeを企業向けに再販するためのリセラー制度を設けています。AWS再販プログラムにおけるリセラー契約を締結したパートナー企業は、Claudeのライセンス再販に加えて、AWS環境でのセキュアな導入支援を提供できます(参照*9)。
認定リセラーは、Claudeの全モデルを取り扱えるほか、利用状況の可視化やアクセス制御の整備も支援します。会社が許可していないツールを従業員が独自に利用するシャドーITを防ぎ、コンプライアンスを遵守したAI活用を実現する体制を提供する点が特徴です(参照*8)。自社にAI導入の専門人材が不足している場合や、金融機関のように厳格な運用体制が求められる場合に、リセラーの活用は有力な選択肢になります。
国内パートナー各社の支援内容と選び方
国内ではすでに複数のパートナー企業がAnthropic認定リセラーとしてサービスを展開しています。たとえば、生成AIの導入から業務活用、システム実装までを一貫して支援するパートナーや、累計7,700を超える契約実績を持つAWS総合支援サービスを通じてライセンス提供から設計、導入、運用、活用支援までを一貫して提供するパートナーが存在します(参照*10)。
パートナーを選ぶ際には、自社の課題がどの段階にあるかを明確にすることが大切です。PoC(概念実証)の段階なのか、本番環境への実装フェーズなのかによって、必要な支援内容は変わります。各パートナーの得意領域や対応実績、料金体系を比較し、自社のプロジェクト規模や業種との相性を見極めてください。
Bedrock利用時の注意点とキャパシティ課題

キャパシティひっ迫・レイテンシ問題と顧客流出事例
BedrockでClaudeを利用する際に、キャパシティのひっ迫が課題として報告されています。サービスクォータ引き上げの承認待ちが長時間にわたったり、ワークロードのクォータ超過によるリクエスト拒否が相次いだりしたことで、決済大手Stripe、株取引アプリのRobinhood、資産運用大手Vanguardは、Bedrockへの移行を見送ったと報じられています(参照*11)。
こうした事象は海外の大手企業で起きた事例です。キャパシティやレイテンシ、機能パリティの問題が解決されないことから、Bedrock経由でClaudeを利用していた顧客の一部がAnthropicのAPIを直接利用する方法やGoogle Cloudへの移行を選んでいます。デザインプラットフォームのFigmaやカスタマーサポートプラットフォームのIntercomが、上記の問題の少なくとも1つを理由としてワークロードを移行させたとされています。自社のワークロード規模やレイテンシ要件が、Bedrockの現行キャパシティで十分にまかなえるかを事前に検証しておくことが欠かせません。
機能パリティの不足とマルチクラウド戦略の検討
機能パリティとは、他社サービスと同等の機能を備えていることを指します。Bedrock経由のClaudeでは、AnthropicのAPIを直接利用する場合と比べて一部の機能が同時に使えないケースが報告されており、これが移行の一因になっています。Claude Codeを含むサードパーティー製ツールに関しても、AWS社内でのツール使用制限がBedrockのセールスエンジニアにとって煩わしい問題となっていると報じられています(参照*3)。
こうしたリスクへの備えとして、Bedrock以外の接続経路も視野に入れるマルチクラウド戦略が選択肢に挙がります。Anthropic APIの直接利用やGoogle Cloudの利用など、複数の経路を確保しておけば、特定のプラットフォームでキャパシティや機能に制約が生じた場合にもワークロードを柔軟に移動できます。自社の依存度とリスク許容度を照らし合わせて、接続経路の分散をどこまで行うかを検討してください。
おわりに
ClaudeをAWSで活用するには、Bedrockの仕組みやモデル選定、料金体系、構成パターン、そしてキャパシティ面のリスクまで幅広い知識が求められます。導入の目的とワークロードの特性を明確にしたうえで、リセラーの活用やマルチクラウド戦略も含めた全体設計を進めることが成功の鍵です。
まずは東京リージョンでのモデルアクセス有効化やClaude Codeの環境変数設定から試し、小さな検証を積み重ねながら本番運用への道筋を描いてみてください。
監修者
安達裕哉(あだち ゆうや)
デロイト トーマツ コンサルティングにて品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事しその後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。大阪支社長、東京支社長を歴任したのち2013年5月にwebマーケティング、コンテンツ制作を行う「ティネクト株式会社」を設立。ビジネスメディア「Books&Apps」を運営。
2023年7月に生成AIコンサルティング、およびAIメディア運営を行う「ワークワンダース株式会社」を設立。ICJ2号ファンドによる調達を実施(1.3億円)。
著書「頭のいい人が話す前に考えていること」 が、82万部(2025年3月時点)を売り上げる。
(“2023年・2024年上半期に日本で一番売れたビジネス書”(トーハン調べ/日販調べ))
参照
- (*1) Amazon Web Services, Inc. – Claude Opus 4.5 now available in Amazon Bedrock
- (*2) Amazon Web Services – Claude Sonnet 4.6 が Kiro で利用可能になりました | Amazon Web Services
- (*3) Business Insider Japan – 【独自】アマゾンがAIツール「Claude Code」社内使用を制限、自社開発「Kiro」優先指示に社員は猛反発
- (*4) Qiita – Bedrockのモデルアクセス有効化が不要に! でもClaudeは初回のみ別操作が必要😣 #AWS
- (*5) Zenn – Amazon Bedrock経由でClaude Codeを使ってみよう
- (*6) Prototype Challenge with Claude – 今更聞けない、Claude Code の活用方法
- (*7) Fenrir Engineers – 生成AIに「機能追加」できる?Claude + AWSで実現する拡張可能な会話アーキテクチャ
- (*8) AWS伴走支援ならサーバーワークス – サーバーワークス、Anthropic社とリセラー契約を締結 ~生成AI「Claude」のAWS上での正規ライセンス販売を開始~
- (*9) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – アイレット、Anthropic とリセラー契約を締結
- (*10) NHN テコラス株式会社 – NHN テコラス、米 Anthropic と Amazon Bedrock における Claude のリセラー契約を締結
- (*11) Business Insider Japan – AWSの生成AIサービスBedrock、容量不足で顧客離脱が相次いでいた。Google Cloudへの移行防げず