【「上位表示」がほぼ無意味に】Googleが「生成AIによる検索結果表示」を始めたので、SEO対策が大きく変わります。

2023.11.17

安達 裕哉

Photo by chiyoizmo

2023年の8月30日、Googleは検索結果に生成AIによる表示を始めました。

これは、従来のSEO対策を大きく変える可能性があります。

例えば、「SNSはSEOにどのような効果をもたらしますか?」と、検索窓に打ち込むと、従来はwebページが羅列されるだけでしたが、生成AIを用いると、以下のような表示に変更されます。

見てわかる通り、画面の大半は「生成AIによる回答」になり、webサイトはかろうじて上位3つまで。正直なところ、全く目立ちませんし、クリックしようとも思いません

「SNSで集客」というキーワードだと、すでに広告と生成AIの結果しか見えないのです。

この、生成AIの結果表示オプションですが、現在はGoogleのSearch Labsのオプションを設定することで使うことができます。

GoogleChromeのスタート画面の右上のフラスコマークをクリックし、

次に「生成AIによる新しい検索体験」のオプションを有効にします。

すると、通常の検索結果の上に、生成AIによる結果が表示されるようになります。

例えば「ディズニーランド 楽しみ方」で検索をすると、従来であれば東京ディズニーリゾートの公式ウェブサイトが表示されるだけでしたが、生成AIでは、直接、欲しい回答が表示されます

「上位表示」がほぼ無意味に

これを見てわかる通り、生成AIが検索結果に表示されるようになると、「上位表示」がほぼ無意味になります。

SEO対策業者は涙目です。

おそらく、今まで「SEO」でトラフィックを稼いでいた多くのサイトが、死滅するのではないかと感じます。

もともと近年のGoogle検索は、個人のページや、弱小メディアのページをほとんど検索結果として上位に表示しませんでした。「同じ内容」であれば、大手企業や大手メディアの記事を上位に表示しているのです。

こうした傾向を嘆いて「Google検索は大手を優遇している」「SEO対策されたページばかりが上位に表示される」というコメントがSNSなどでなされています。

ではいったいなぜ、Googleは個人のサイトを軽視するようになったのでしょうか。

文章を書く方であればご存じだと思いますが、「個人のメディア/文章」は、必ずしもクオリティとして劣っているわけではありません。

中には専門家の鋭い知見が数多く含まれている優れた文章も数多く存在します。

検索上位には大手のページばかりが表示される理由は、全体としてクオリティが低いからではなく、「弱小メディア」や「個人のページ」のクオリティのバラつきが大きいためです。

非常に洗練された専門家の文章から、愚にもつかない書き散らしまでが存在しているのが個人のページだとすると、大手メディアの記事は『一定の質』が担保されている。

したがって、ひとまず「大手」のページを表示さえしておけば、問題を起こしにくいと言えます。

これは言い換えればGoogle検索が、保守化しているとも言えます。

Googleのようなプラットフォームには、ある程度公共性が求められますから、何か問題があるとすぐに非難の対象になります。

それを避けるために、近年のGoogleが「権威性」を重視し、大手企業のドメインを優先するのは、そのためです。

しかし、この変更で「大手サイト」「老舗ドメイン」も、安穏としていられません。「答え」を得るのに、もはやサイトをめぐる必要すらないのです。

ディズニーランドの楽しみ方を聴いたら、つぎに「理想の回り方は?」という質問が出てきますので、それをクリックするだけで、生成AIが次の答えを用意してくれます。

今までのSEO対策って、いったい何だったの?って思うくらいです。

生成AI検索時代に、リソースを突っ込むべき3つのポイント

では、このようなサービスがGoogleから出てしまったことで、「自社のサイト」はどのように運用すべきなのでしょうか。
結論から言えば、特にBtoBビジネスや、単価の高いハイエンド顧客向けのビジネスにおいては、リソースを突っ込むべきは、

1.「予測SEO」
2.有料化と囲い込み
3.「ソーシャルメディア」の運用
の3つに絞られてくるかなと思います。

1.予測SEO

予測SEOとは、検索エンジンのアルゴリズムの変化やユーザーのニーズの変化を予測すること……ではありません。

予測SEOとは、未来ではなく、今まさに、ニーズが顕著に増加しているテーマを見つけることです。

ピーター・ドラッカーは、著書「イノベーションと起業家精神」の中で、「すでに起きた未来を探せ」と言いました。

つまり、現在発生し始めた未来、というのが、予測SEOのターゲットです。

そういう意味では「予測」と称するよりも良い言い方があるかもしれませんが、「近い将来に」という限定付きの予測です。

対照的に、従来のSEO対策は「すでにニーズの大きいテーマを見つけること」を基本としています。

具体的には、検索ボリュームが大きいキーワードを探して、そこに対してコンテンツを充てる行為です。

しかしこの手法の欠点は「全員が同じデータを持っていること」にあります。実際、皆同じようなSEOツールを持っており、Googleのキーワードプランナーを使って、キーワードの選定をしています。

さらに言えば、Googleは、AIの学習に十分な情報を持っているので、「生成AIの生み出すコンテンツ」に、一つ一つのサイトが勝負を挑んでも、とても勝てません。

ですから、従来の「◎◎とは」「◎◎やり方」などの、検索ボリュームの大きなキーワードを狙ったSEO対策は、すべて徒労に終わる可能性が非常に高いです。

では逆に、今ニーズが顕著に増加しているテーマを見つけ、そこに対してコンテンツを提供するとどうなるでしょう?

このプロセスは、従来のSEOモデルが現在の人気キーワードに基づいてコンテンツを最適化することを重視するのとは異なります。

例えば、特定のシーズンやイベント(トレンド)に合わせて、事前にコンテンツを最適化するのです。

具体的には、前のマガジンで取り上げたような、以下のような出来事は「トレンド」にあたるでしょう。

・新たに法制化された事項
・大手企業が出す「新サービス名」「新商品名」
ベストセラー本の中のコンセプト
・大手企業のプレスリリース中の文言
Twitterトレンド
Youtubeの視聴トレンド
海外で流行しているワード
・科学上の新しい発見
・今年急に業績が好調になった企業に関連したワード
・大手企業の行っている実証実験・テストマーケティング

こういった出来事は、データは少ないですが、「兆し」を発見することは、少し手間を掛ければできます。

そうすれば、「Googleや他社の入手していない情報」を元に動ける。結果的に差別化が可能です。

予測SEOを実行することによって、コンテンツ制作者は読者のニーズを先取りし、従来のSEO戦略に依存している競合他社に、一歩先んじることが可能です。

実際、2020年のパンデミックにおいては、「テレワーク」や「オンラインショッピング」といった分野の関連キーワードが急増しました。

仮に2020年の年明けに、素早く状況を察知して、SEO対策を施していたとしたら、サイトはかなりの評価を獲得できていたはずです。

では、具体的に予測SEOを実行するには、どのような手続きを踏むべきでしょうか。

将来のトラフィックが多いキーワードを予測することは未来を予見するように思われがちですが、現在では生成AIの能力を逆手に取るのが有効です。

例えば以前にもご紹介した、以下の「予測SEO」の6つの手法ですが、生成AIが使えるようになると、調査がかなり簡便になります。

従って、弊社においてはメディア別に、例えば次のような手順を作って(あくまで一例です)、記事化すべきコンセプトやキーワードを抽出しています。


1.1週間に一度、ニュースサイトをクロールして、記事化を検討すべき「新商材」「新サービス」を挙げる


2.1週間に一度、GAFAクラスのグローバル企業、数十社のリリースをクロールして、記事化を検討すべき彼らの取り組みを挙げる


3.1か月に一度、新法案・新判例などをクロールして、記事化を検討すべき用語を挙げる


4.1週間に一度、海外ニュースサイトをクロールして、記事化を検討すべき事件・商品・トレンドを挙げる


5.Twitterトレンドを1日に数度記録し、1か月単位で、記事化を検討すべきトピックを挙げる


6.1週間に一度、Youtubeの「急上昇」の結果をもとに、動画を抽出し、その中から記事化を検討すべきトピックを挙げる。

この場合、2021年までのデータしか持たないChatGPTよりも、検索エンジンとの相性が良い、Googleが提供しているBardが有効です。

試しに「この半年で、急激に検索ニーズの増えた商品や新サービスの一覧を挙げてください」と命令してみましょう。

2023年2月から8月までの半年間で、急激に検索ニーズの増えた商品や新サービスは、以下のとおりです。


・NFT関連サービスや商品
・メタバース関連サービスや商品
・ロボット関連サービスや商品
・サステナブル関連商品
・リモートワーク関連サービス
・防災関連商品
・健康・美容関連商品


これらの商品やサービスは、いずれも社会の変化やニーズに対応するものであり、今後も検索ニーズの高まりが予想されます。

あるいは、プレスリリースの調査でも、以下のような命令が可能です。

「2023年に行われたプレスリリースの中で、最も注目を集めたものを上から10個、紹介してください」

なお、プレスリリースのように「事実」を扱うものについては、Bardよりも出典を明確にしてくれるBingのほうが有効です。

このように、生成AIはかなりのキーワードリサーチを自動化してくれるため、これまでのSEO対策に比べて、かなり優位にたつことができます。

なお、予測SEOについては過去記事もありますので、参照してください。

参考記事)

これから読まれそうなネタを記事にする「予測SEO」のすすめと、記事ネタ抽出へのAI利用の推進について。

弱小サイトでも、簡単に検索の上位表示が狙える、SEOのブルー・オーシャン戦略の話。

2.囲い込みと有料化

生成AIの出す結果は、欲も悪しくも「平均的な話」なので、総括的な情報を得るには良いですが、専門的で、深く突っ込んだ情報を取るのにはリスクがあります。

これは「生成AI」が嘘をつくためです。

例えば「著作権法32条」を検索してみましょう。

概要を知ることはできますが、「これは引用にあたるか?」などの細かい事例については、専門家のサイトを覗きに行く必要があります。

生成AIも「これは法的なアドバイスではありません」と注釈をつけています。そのため、専門的な意見についてはサイトに訪問をする人が多くなることが予想されます。

しかし、今までのようにサイトにノウハウを全て公開してしまうと、生成AIに、それを学習されてしまう可能性があります。

従来は「ノウハウを公開することで訪問数を稼ぐ」ことが正しい戦略でしたが、これからは「ノウハウを非公開にすることで訪問数を稼ぐ」方向に向かうことが予想されます。

「情報はタダではない」とユーザに伝えるための、会員化を含めた「囲い込み」と、場合によってはメルマガやコンテンツの「有料化」を検討するメディアが増えるでしょう。

なお、具体例としては本マガジンの『予測SEO』という言葉も、Googleは教えてくれません

生成AIの出した結果も、的外れです。これは、私が「予測SEO」という言葉を有料マガジンの中でしか使っていないからです。

このように「情報の壁」を設けて、生成AIに学習させない、という傾向が強まるのはほぼ間違いないと思います。

3.「ソーシャルメディア」の運用

「公開されたweb」に情報を出すことが大したメリットにならなくなれば、当然のことながら、「プラットフォーム上」で、フォロワーに直接ノウハウを伝える、という行為が主流になるでしょう。

特に「Googleに学習させたくない」という事であれば、YoutubeなどのGoogleの息のかかったサービスにはコンテンツを載せず、生成AIをサービス化していない「X(旧Twitter)」「Facebook」「Instagram」などの利用を考えたほうが良いかもしれません。

(もちろん、今後はどうなるかわかりませんが)

ともあれ、一つだけ言えるのは、Googleは今後、webサイトにトラフィックを流してくれる保障は何一つない、という事だけです。

ですから、従来の Google検索結果表示 → 自社サイトへの誘導 → 問い合わせ というラインが機能しなくなる可能性は非常に高い。

であれば、SNSプラットフォームで直接集客 → 自社サイトへの誘導 → 問い合わせ という導線に切り替えることを検討せねばなりません。

なお、アカウント運用については、いくつかのバックナンバーが役に立つと思います。

Twitterのインプレッション数、エンゲージメント数などを見て、アカウント運用を改善する方法

実際に使われている標準的な「Twitter運用マニュアル」を解説します

Twitterアカウントの育成に関する、技術的要素と実務のポイントを詳細解説します。

公式コンテンツが語る、Twitterに関しての「噂」ではない「ホント」の推奨事項18項目

注:転載の際には、このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。

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