AIによる文章生成は、SEO記事の作成にどの程度役に立つのか、検証した。

2023.11.17

安達 裕哉

Photo by fukukozy

ネット界では「神」と評判の文書生成AIである、GPT-3やChatGPTですが、

すでにAIを使った記事作成のwebサービスが出現しています。

AIが記事を自動生成するようになれば、ただでさえ安いライターへの原稿料がますます安くなったり、あるいは仕事がなくなったりする可能性は十分あるでしょう。

が、果たして現在のAIはどの程度の記事をアウトプットできるのでしょう。「ライターや広告代理店の脅威」になるのでしょうか。

具体的なSEO記事の制作過程を追い、検証してみました。

GTP-3とChatGPTの出力比較

まず現在、記事作成に使えそうなAIのサービスとして、GTP-3と、ChatGTPという2種類があります。

どちらを使ったほうが良いかを検証するために、私が寄稿しているサイトの記事のタイトルを借りて、どのような結果が帰ってくるかを確認しました。

まず一つ目は、下の記事です。

【永久保存版】プロが勧める 初心者の金融リテラシーを劇的に向上させるスゴい7冊

このタイトルどおり、GTP-3とchatGPTに「プロが勧める、初心者の金融リテラシーを劇的に向上させるスゴい7冊を挙げてください。」と質問し、帰ってくる結果を確認しました。結果は以下です。

【GTP-3】

【chatGPT】

出力結果には明らかな違いが見られました。GPT-3の方は世の中に存在しない本をあげて、全くのデタラメです。

ところがChatGPTにかかれている本はすべて実在する上に、実際に私が読んで「有用」だと思った本が数冊含まれていますし、全て実在する本なので、非常に精度の高い回答です。

Amazonの金融本のランキング、と言った感じでしょうか。

これはAIの出力結果が使えるかもしれません。

2つ目の記事はこれです。

高校生の金融教育義務化 何を学ぶ?なぜ今必修科目に?

タイトルが2つのことを質問していますので、若干難易度が上がっています。結果は以下です。

【GPT-3】

【ChatGPT】

いい勝負に見えますが、感覚的にはChatGPTのほうが、「今必修科目になっている理由は」と、質問にきちんと答えている、と言えるでしょうか。

ただし、金融教育の義務化について、金融庁のサイトでファクトチェックを行うと、(高校生のための金融リテラシー講座)いずれのAIも「ライフプランニング」「金融トラブルを防ぐ」などの目的は書かれていません。AIの書いていることは、デタラメです

3つ目は贈与税についてです。

贈与税はいくらからかかる? 基礎控除・非課税制度・税額の計算方法などを解説

【GTP-3】

【ChatGPT】

これも、かなり異なった結果になりました。GPT-3は具体的な税額や税率を出力していますが、ChatGPTは基礎控除の金額のみです。

しかし、ファクトチェックを行うと、両者ともデタラメであることがわかります。基礎控除の金額は110万円であり、税率も国税庁のサイトでみると全く違う数字です。

ChatGPTのほうが嘘が少ない分、マシと言ったところでしょうか。

ただ、これは五十歩百歩と言わざるを得ず、AIの出力結果は正しいこともありますが、おそらく多くはデタラメなので、いずれにしても、そのまま使うわけには行きません。

なお、GTP-3よりもChatGPTのほうが精度が高いと感じたので、移行の実験ではChatGPTを利用することにしました。

AIは、もっともらしくウソを吐く 

とはいえ、これは予め想像できていたことでもあります。

ChatGPTのページには、制限事項として、「もっともらしく聞こえますが、不正確または無意味な回答を書くことがあります。この問題を修正することは困難です。」とあるからです。

したがって、AIをSEO記事の作成に使う際には「ファクトチェック」は必須です。

原理的にAIは真偽を保証できないので、AIは嘘を言っているとの前提で使ったほうが良いでしょう。

前回書いたように、Googleは「検索品質評価ガイドライン」において、健康やお金周りの記事などについては特に厳しく「ファクト」「信頼性」を求めてくるためです。

したがって、AIの出力結果をそのまま記事にすることはやめたほうがいい、と言わざるを得ません。

余談ですが、Googleは昨年12月に記事の品質を評価するための指標として、従来のE-A-T(「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trustworthiness(信頼性)」)を改め、もう一つのE(「Experience(経験)」)を加え、E-E-A-Tとしました。

 これは、実際に経験してもいない「レビュー」をAIが生み出した場合には「低品質とみなす」という意思表示なのかもしれません。

いずれにせよ、AIは「体験談」を生み出せませんから、「レビュー」「やってみた」「使った」「食べた」などの、経験領域でAIを活用しようとするのも、間違った試みです。

例えば、「二郎系ラーメンはどんな味がしますか?」と質問すると、答えらしきものは返ってきます。

しかしAIは体験をしていないので、出力される内容はもっともらしいのですが、「コクがある」「やや濃厚」という具体的ではなく、「わかったような、わからないような」話が多いのです。

また、客観的な材料の情報の真偽は、上で述べた通り不明です。

続けて、トゥール・ダルジャンの名物である鴨の血のソースの味を聞いても、「独特」という回答のみです。

その後の回答も「独特な味とは特別な味です」と循環してしまっています。

そうなると、SEO記事の大半を占める

「調べもの」

「体験談」

のいずれもが、ファクトが保証されないのでダメ、経験していないのでダメ、ということでAIによる文章生成ではカバーできない、ということになります。

Googleは検索において「ユーザの意図」には4種類があると言っています。

一つは「知りたい」という意図。

二つ目は「何かをしたい」という意図。

三つめは「このサイトに行きたい」という意図。

四つ目は「近くの店を探したい」という意図。

AIによる文章は、このいずれも満たしません。

この時点で、「AIに文書作成を丸投げする」という夢は潰えたと考えてよいでしょう。

すると、残る期待は、AIは知識労働者の「敵」や「代替」ではなく、アシスト役としての働きです。

つまりライターとAIの共同作業に、役に立つ領域があるのではないだろうか、と言う考え方です。

ライターとAIが共同作業できる領域はどこか

その問いに答えるためには、まずライターの仕事を分解する必要があります。

【ライターの仕事の流れ】

1.クライアントから依頼されるSEO記事の目的を把握

2.調査・キーワードの選定

3.SEO記事の企画を立案

4.クライアントとの折衝・企画の承認

5.ライターによる構成案の作成

6.クライアントによる構成案の承認

7.執筆

8.クライアントによる査読、修正依頼

9.修正

10.クライアントによる検収

結論から述べると、太字がAIの活用分野です。

調査から企画、そして構成案の立案にかかる、アイデア出しの分野で特にAIの活用が有効であると見込めます。

これはAIの原理から言って、得意領域が「関連性のあるトピックを探して表示すること」だからです。

例えば、カーボンニュートラルに取り組んでおり、話題性のある記事で読者を引き付けたいと望むクライアントから

「カーボンニュートラルについて、いくつか記事の企画を出してほしい」と打診されたとします。

通常であれば、編集やライターがトピックの調査を行い、検索ボリュームなども調べたうえで、企画を立案するでしょう。

しかし、関連性のあるトピックを探すのは、従来ニュースやSNSなどを巡回する必要があり、大変手間がかかります。そこで、AIの登場です。

何を書いたら読まれるか、単刀直入に聞いてみましょう。

すると、カーボンニュートラルについてのトピックが上がってきます。

もう少し深堀をするために、どれか一つを選択し、具体例を挙げてもらいましょう。このケースでは、最下部の「事例や成功事例」について深堀してもらいます。

すると、さらにいくつかに細分化されたトピックが紹介されます。

ここでは次に、「大企業の取り組み」について聞いてみましょう。

具体的な国内企業だと、

・東京エレクトロン

・三菱電機

・トヨタ自動車

・日産自動車

・パナソニック

・富士通

・ソフトバンク

等が挙がってきました。

具体名が挙がってきたので、ここで、ファクトチェックします。

すると、いずれの会社も、カーボンニュートラルについてメディアへの露出が多数あり、取り組みが多数公表されていることがわかります。

そこで、具体的な企業名にしぼって、もう少し詳しく事例を調査するための材料を集めます。ここでは「トヨタ自動車」を採用しました。

トヨタ自動車は、3つの側面からカーボンニュートラルにアプローチしていると提案がありました。

SEO対策には「独自性(そこでしか取り扱っていない話題)」が重要ですから、AIに「独自の取り組みはありますか」と聞いてみましょう。

ここでもう一度ファクトチェックし、話題について検証します。

ここでも、AIのトピックについては真であると確認できました。

さらに、企画のレベルに落とすために、あと一段階深堀りし、燃料電池車について事例を挙げてもらいます。

ここまでトピックを挙げることができれば、あとはライターの取材やサーチボリュームの調査などを併用し、企画を仕上げることができるでしょう。

ここまで見てわかるように、AIの本質は「ライターの代替」ではなく「SEOツールの代替」です。

例えば、Ubersuggestと言うツールがあります。

ドメインとキーワードを入れるとサーチボリュームや、共起語、タイトルの提案などをしてくれるツールです。

キーワードの検索ボリュームはなどはChatGPTに聞いても「データを持っていません」と回答されるので、素直にツールを使うべきです。

しかし「トヨタ自動車 燃料電池車」と言うキーワードの記事で、検索上位を狙うにはどのような話題を記事で扱うべきか?と言う質問には、それなりの妥当性がある回答が返ってきます。

結論

AIによる文書生成は、ライターの代替ではなく、各種SEOツールの代替であり、上位互換である可能性が高いです。

実際、原理的に情報の真偽が詳細に問われる、細かい実務的な情報より、見出しや小見出しを作ることに長けています。

したがって、利用に際しては、トピック生成と企画立案の段階で、アイデアを出すツールとして非常に役に立ちますが、ファクトチェックと取材は必ず必要です。

それを認識して使うならば、ライターのアシストツールとして役に立つでしょう。今は無料で使えますので、「なんの記事を書こう?」と迷っている場合は、Chatしてみても良いと思います。

注:転載の際には、このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。

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